生活保護を受けている世帯は160万ほど。その過半数が高齢者世帯です。さらに支援が必要にも関わらず、申請をためらう人は多いといいます。生活保護費以下でしかない「低年金者の実情」と生活保護のネガティブな一面をみていきましょう。
年金月6万円・75歳のおひとり様「もう、働けません。」貯蓄ゼロの悲惨…家族は金持ちでも「生活保護」は認められるか? (※写真はイメージです/PIXTA)

最低生活費を下回る低年金の高齢者…身内を頼ることもできず

――年金が少なくて、暮らしていけない

 

そんな高齢者の声を耳にすることも多いでしょう。生活保護の基準となる最低生活費は、東京都23区の場合、12万5,600円(75歳・単身世帯の場合)。そのうち住宅扶助基準額は5万3,700円、生活扶助基準額は7万1,900円。持ち家で家賃の支払いがない、という場合でも、月々7万1,900円は生きていくために必要です。

 

また生活費が安いといわれる地方(各県庁所在地)でも、生活扶助基準額は最低で6万5,470円。2023年6月から国民年金(老齢基礎年金)の支給額は満額で6万6,250円。地方・持ち家であればギリギリ生きていける水準で、東京23区では生きていくのに6,000円ほど足りない計算です。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金だけ受給してる人は3,614万人で、平均受給額は月5万6,479円。さらに受給額の分布をみていくと、月6万円未満が902万人ほどで4人に1人という水準。また厚生年金保険(第1号)受給者は4,023万人で、平均受給額は月14万5,665円。しかし元会社員であれば「生活が困窮することはない」とは言い切れません。受給額の分布をみると年金月6万円未満が64万人。受給者の4%程度ではありますが、数にすれば相当の人が生活困窮の候補者という水準です。

 

もちろん、配偶者や同居家族がいるなどして、すべての低年金者が困窮しているわけではありません。しかし頼れる身内がいない単身の低年金者が生きていくには、相当な貯蓄があるか、働いて収入を得るか、手段は限られます。

 

健康寿命は徐々に延び、働いている高齢者は珍しくないでしょう。しかし年齢を重ねるごとに、支援・介護のリスクは高まります。要支援・介護者の割合は、70代前半では5.8%ですが、75歳を境に12.7%と10人に1人の水準を超え、80代前半では26.4%と4人に1人となります。特に平均寿命が短い男性のほうが、75歳ほどになると「もう、働けない」→「生活が困窮」となる割合が高まるとされています。

 

厚生労働省『被保護者調査』によると、2023年2月時点、生活保護世帯は164万2,915世帯。人数にして202万1,614人です。そのうち過半数を超える90万1,260万世帯が高齢者世帯です。