生活保護は、貧困によって最低限の生活すらできなくなった場合に、最後のセーフティネットとして機能するものです。しかし、誤解や偏見のために、本来受給すべき人が受給できていない実態があります。本記事では、これまで10,000件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏が、著書『わたし生活保護を受けられますか』(ペンコム)から、生活保護についての正確な知識を解説します。
生活保護の「不正受給率1%未満」だが…数字から見えない“想像を絶する実態”と不正受給があとを絶たない「悲しすぎる理由」【特定行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「申告漏れ」から不正受給となった2つのケース

◆友人に分割で払うと約束した借金が申告漏れのケース

家具什器費、エアコン購入・設置費用、転居費用、親が危篤の場合に帰省する費用、メガネ代など、通常の生活保護費とは別に申請をすれば支給してもらえるものがあります。しかし、これを知らずに、自分でどうにか工面するしかないと思い込み、友人に分割で払うと約束して借金してしまいました。

 

このように、お金を借りたことは収入申告の対象になると知らないケースも多く、これもまた不正受給としてカウントされています。

 

■ポイント

 

借金と生活保護制度については、ネット上で誤った情報が散見され、誤解している人が多い。

 

◆親を助けようとアルバイトをしたが申告漏れだった高校生のケース

部活動を続けるために必要な交通費といったお金を親に負担をかけず工面するために、こっそりアルバイトをしていた生活保護世帯の高校生が、1年後に収入申告をしていないことを指摘され、多額の返還を求められて家族関係にひびが入ってしまったケースもありました。

 

実際、国が公表している不正受給の多くを占めるのが、こうした高校生のアルバイト料の申告漏れです。

 

生活保護利用者の権利と義務は表裏一体ですが、申告さえすれば多くの控除が認められて、アルバイトで稼いだ分がすべて世帯の保護費から減額されるわけではありません。

 

こういった正しい情報を生活保護受給者が理解できるよう積極的にコミュニケーションをとって説明することが、福祉事務所の役割でもあります。

 

不適切な生活保護運用がなされないよう、福祉事務所は『生活保護のしおり』という生活保護制度について分かりやすくまとめた冊子の活用などを通して、制度の仕組みについて十分な説明を行うことを厚生労働省により求められています。

 

 

三木 ひとみ

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所

特定行政書士