老後の生活を支える公的年金。標準的な専業主婦のサラリーマン世帯であれば、月22万円ほど受給されるとか。一方、共働き夫婦の場合を考えてみると、手にできるのは驚きの年金額。しかし、それで老後も安泰かといえば、そうとは言い切れないようです。みていきましょう。
年金月39万円・65歳の勝ち組夫婦でも、10年後には「老後崩壊」の危機「これで、どう生きていけと」 (※写真はイメージです/PIXTA)

2023年6月支給分から年金増額だが…

厚生労働省によると、令和5年4月分、6月15日(木曜)支払分からの年金額は、法律の規定により、67歳以下は令和4年度から原則2.2%の引き上げ、68歳以上は令和4年度から原則1.9%の引き上げとなります。

 

その一例として国民年金が満額の場合は、令和4年度64,816円から令和5年度66,250円、厚生年金は標準的な夫婦*で令和4年度219,593円から令和5年度224,482円となります。

 

*平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

 

この標準的な夫婦は、専業主婦のサラリーマン世帯。これからは共働き夫婦のほうが多くなってくるので、その場合について考えてみましょう。

 

たとえば「大卒男性×大卒女性」という組み合わせの場合。大学卒業後、共に正社員として働き、60歳定年後は非正規社員として再雇用され、65歳で現役を引退。その間、平均的な給与を手にしてきた、とします。

 

単純計算、男性が65歳から受け取る厚生年金は14.6万円ほど。女性が65歳から受け取る厚生年金は11.6万円ほど。夫婦ともに国民年金は満額支給だとすると、夫婦で月39万円の年金を手にできる計算です。

 

あくまでも平均値での単純計算であり、夫婦ともに大学卒業して以来、会社員として活躍し続けた場合ですが、厚生労働省がモデルとする“標準的な夫婦”から比べると、多くの年金を手にできることがわかります。「大卒正社員カップル」という勝ち組夫婦であれば、老後も安泰、といったところでしょうか。

 

しかし前述の年金額増額については、きちんと“オチ”があります。

 

少子高齢化が進む日本において、将来の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念もありました。そこで取り入れられたのが「マクロ経済スライド」。賃金や物価による年金額の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みで、現在は物価上昇、または賃金上昇に合わせて改定率を調整、その後にスライド調整率で年金の給付水準を調整しています。

 

そして2023年度は2021年度と2022年度のマクロ経済スライドの未調整分の調整▲0.3%と、2023年度分のマクロ経済スライドの調整▲0.3%が行われるため、全体で▲0.6%分、年金水準が押し下げられ、年金額の実質的な価値は目減りとなったのです。「年金、増額」の部分だけを聞いた人は、ぬか喜びだったに違いありません。