株価の割安さを測る指標は複数ありますが、もっともよく用いられる値のひとつが「株価収益率(PER)」です。しかし、メジャーな指標だからこそ注意して見る必要があると、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏はいいます。初心者がハマりやすいPER分析の“落とし穴”をみていきましょう。
「PERは15倍超が割高、15倍未満が割安」は本当?投資のプロが警告…初心者がハマる「銘柄選び」の落とし穴 (※写真はイメージです/PIXTA)

「会計上の利益」と「キャッシュの流入」は別

もう1点、同じく1株当たり純利益で注意が必要な点があります。

 

それは、あくまで会計上の利益であり、キャッシュの流入量を示すものではない、ということです。

 

たとえ合法の範囲内でも、決算書を見栄えよく作成することは可能です。株価を下げたくない、関係者からの信用を保ちたいなどの理由で、実態以上の純利益を何とか計上する会社も存在します。また、仮にそういった意図がなくても、会計処理の考え方や方針の違いにより、1年間同じ事業活動をしても純利益の値が違ってくる場合もあります。

 

ですから、会計上の純利益相応にキャッシュが流入している会社も、そうでない会社もあります。そして、「PERが低い=1株当たり純利益に対して株価が安い」ことが「その事業の収益力に対して株価が安い」とイコールにはならず、結局のところ「株価の割安さ」が不明瞭になってしまうこともあるわけです。

 

なお、この点については、(1株当たり)純利益とともに、営業キャッシュフローもチェックするとよいでしょう。純利益とともに営業キャッシュフローも相応に計上されている会社ならば、会計上の利益だけでなく、本当に「お金を稼いでいる」と判断できるのではないでしょうか。

 

収益面から株価の割安さを測るなら、複数の視点を持とう

PERを見る際にまず注意すべきなのが、1株当たり純利益には「予想値」が用いられることが一般的だ、ということです。したがって、予想が修正されるたびに、PERも変動してしまいます。さらに、会社の業績というのは毎年変化するものでもあります。

 

また、PER算出時に用いられる1株当たり純利益は、あくまで会計上の利益であり、キャッシュの流入量を示すものではありません。

 

以上の理由から、PERだけで株価の割安さを測ることは危険であり、複数の視点から判断したほうがよいでしょう。

 

 

株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO

川合 一啓