株価の割安さを測る指標のひとつに、「株価純資産倍率=PBR」があります。会社の資産面からみて株価が割安かどうかを判断する指標であり、銘柄分析の際によく用いられる指標のひとつです。ただし、単純にその値だけで判断するのは危険だと、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏はいいます。それはなぜか、詳しくみていきましょう。
その株価、本当に割安…?銘柄選びで重要な「PBR」の注意点【投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

PBRとは何か?

PBR(倍)=株価(円)÷1株当たり純資産(円)

 

PBRは、以上の式によって算出されます。現在株価が、1株当たり純資産{=純資産÷(発行済み株式総数-自己株式)}の何倍であるかを示す値です。

 

たとえば、株価が1,000円で1株当たり純資産が1,000円ならば、PBRは1倍となります。同じく株価が1,000円で、1株当たり純資産が500円の場合は、PBRは2倍になります。そして同じく株価が1,000円で、1株当たり純資産が2,000円の場合、PBRは0.5倍になります。

 

なお、会社には資産と負債があり、以下のような関係が成り立ちます。

 

総資産=負債+純資産

純資産=総資産-負債

 

理論的な話ですが、会社を清算することになったと想定して、株主が「その会社の株価と同額の純資産」を保有できるが、PBR1倍の時です。そのためPBR1倍はひとつの目安になっており、それ以下なら株価が割安だとよくいわれます。

PBRをみるときの注意点①…資産の「内容」に注目

さて、企業の決算書類のひとつである貸借対照表を見るとわかりますが、資産にはさまざまな種類があります。

 

「流動資産」には、現金・預金、受取手形、売掛金、商品や材料といった棚卸資産、などが、「固定資産」には、建物・機械、車両・備品、ソフトウェア、などがあります。

 

そして、PBRが低く割安だと思われる会社については、その内容に注意が必要です。

 

現金・預金など流動性の高い資産は文字通り「資産」「お金」そのままであるといえます。しかし、固定資産のなかには、それを売却したら仕事にならない、つまり売却などできない(お金にならない)資産や、現実に売却した場合の価値が会計上の価値に満たない資産もあるからです。

 

つまり、同じ資産にも「質」があり、金銭的な価値があるものも、会計上資産に計上されているがそれ相応の金銭的価値がないものもあるのです。

 

ですからPBRが低い銘柄でも、貸借対照表を見てその資産の内容にも注目しておくことが望ましいといえます。

 

大雑把には、固定資産よりも流動資産が多いほうが良い、といえます。しかし、個別に資産の種類を確認していくのがベストでしょう。というのも、たとえばお金が余っていて投資有価証券をたっぷり持っている会社などがそれを固定資産に計上している場合もあり、その場合は固定資産を現金・預金と同等に考えるといった例外もあるからです。

 

会計に精通し、資産内容を詳しく分析できるようになれば、PBRの見方もより深くなるのではないでしょうか。