収支はギリギリ、破産の危機……こうした状況の高所得者は意外にも多いものです。一体なにが原因なのでしょうか? 本記事では、CFPの伊藤貴徳氏のもとへ相談に来た年収1,500万円のAさんの事例とともに、賢い家計管理方法について解説します。
年収1,500万円・47歳エリート会社員、家計を洗いざらい晒して衝撃…貯蓄額“たったの200万円”「これでは老後破産確定」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

47歳で年収1,500万円なのに…貯蓄額はたったの「200万円」

47歳のサラリーマンAさんから相談依頼を受けました。都内の閑静な住宅街に一軒家を構え、Aさんと同い年の奥様と小学生のお子様2人の4人家族。お庭は綺麗に手入れされ、カースペースには高級外車が置いてあります。Aさんは大手金融機関に勤務していて、年収は1,500万円。奥様は専業主婦で一家を支えています。

 

一見、理想的なご家族に思えますが、ご相談内容は「なぜか生活がキツイ」とのこと。収支バランスを確認するため、収入と支出の一覧をお聞きすると、住宅ローン、教育費、生活費など支出の比率が高く、現在の貯蓄額は200万円という事実が判明しました。

 

加えて、Aさんの現在の年齢を鑑みると、今後小学生のお子様2人が進学するにつれて、教育費はさらに増えていきます。お子様が大学入学を迎える支出のピークは、定年退職年齢の60歳に迫る状況です。このままでは老後破産確定でしょう。それどころかお子様の進学もままならないかもしれません。

 

今後の教育費の見込み…オール私立で1,838万円×2人分

「文部科学省:令和3年度における幼稚園3歳から高等学校第3学年までの学習費総額」によると、幼稚園から高校まで私立に通った場合の教育費総額は1,838万円になります(オール公立は574万円)。さらに、大学の教育費は国立・私立文系理系・医科歯科系によってさらに変わります。 お子様の成長につれて教育費の増加を見込んだ生活設計をしていく必要があります。

 

Aさんのお子様は、私立の小学校に通っています。このまま私立の学校に通うと、高校卒業までに、1人あたりトータルで約1,838万円の教育費が必要となります。大学進学を見込むと、その費用はさらに増えます。お子様の将来の進路や希望を考慮に入れ、大学進学を見込む場合の教育費も考慮することが必要です。

 

「企業型確定拠出年金」に加入していたことが判明!しかし、その預け入れ先は…

Aさんに、収入について詳細をお聞きしたところ、「そういえば」とおもむろに部屋の奥から「企業型確定拠出年金」のご加入内容をお持ちいただきました。見方がわからないとのことで拝見すると、500万円の掛金が。Aさんには、「企業型確定拠出年金」という、大企業ならではの手厚い補助がありました。

 

企業型確定拠出年金とは、企業が掛け金を出してくれて、従業員が運用する年金制度です。運用成績によって将来受け取れる年金額が変わります。具体的には、従業員が金融商品の選択や資産配分を考え、定年退職の60歳以降に積み立ててきた年金資産を受け取ります。

 

金融商品にはさまざまな種類がありますが大きくわけると、

 

・元本は確保されるが運用効果も少ない:元本確保型

・運用効果が高いが元本割れの可能性もある:価格変動型

 

この2つに大別されます。確定拠出年金への預入商品は、元本確保型に5割、価格変動型の債券に3割、株式に2割。加入当初から十数年間ずっと同じです。

 

企業型確定拠出年金には、税制のメリットがあります。通常、同様の金融商品を証券会社などで運用すると、運用益には税金がかかりますが、企業型確定拠出年金には税金はかかりません。

 

元本確保型とは、いわゆる定期預金のようなものです。確定拠出年金という、「増やす」ことにメリットがある仕組みのなかに定期預金を入れてしまうのは少々もったいないような気もします。実際、加入者の確定拠出年金の組入割合を見てみると、元本確保型に50%以上入れている人が多いようです。Aさんの場合も元本確保型を預け入れ先にしていました。近年の株高の影響もあるので結果論ではありますが、もう少し運用系の割合を増やしていたら、残高はどんなことになっていたか……。

 

もし企業型確定拠出年金へ加入されていて、預け入れ先を一度も確認していない人は、この機会に見てみるといいでしょう。