49歳・製造業で働くAさんは、いわゆる就職氷河期の影響により、非正規雇用での労働を余儀なくされた「団塊ジュニア」と呼ばれる世代です。正社員よりも年収が少なく日々の生活の困窮はもちろん、老後資金の問題も徐々に迫ってきています。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏がAさんの事例とともに、団塊ジュニア世代の貧困問題について解説します。
手取り月17万円・49歳で寮生活の非正規…「老後破産」が垣間見えた“団塊ジュニア世代”の怨念「時代を恨みます」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

団塊ジュニア世代…49歳・非正規社員の嘆き

Aさんは49歳の非正規(製造業)・手取り17万円で働く男性です。いわゆる団塊ジュニアで就職氷河期世代です。大学を卒業しても就職することができず、製造業を中心にいくつかの工場を転々としてきました。

 

公務員だったAさんの父親は76歳で団塊世代です。厳格で厳しかった父親は就職できなかったAさんを「大学まで出してやったのになぜ就職できないんだ!」と叱責したことから、Aさんは大学を卒業しても家には戻らず、現在も工場での寮生活を送っています。

 

若いころは結婚も考えた女性もいましたが、非正規であることを理由に相手の両親から反対され、いまでも独身です。

 

「僕は子供が好きなんですよ。本当は結婚して子供も2人以上は欲しかった。父親はわかってくれなかったけど就職試験もかなり頑張ったんですよ。でもダメでした。時代を恨みます」

 

そんなこともあり、学生時代は明るくムードメーカーだったというAさんも、いまではすっかり無口な男性になってしまいました。

 

「もうじき50歳になりますから老後のことを考えます。体力的にも仕事がキツくなってきました。一番困っているのは仕事を辞めたら寮から出ないといけないことです。住む所がなくなります」

 

Aさんの将来の年金額を計算しましたが、月10万円程度です。Aさんは真面目で貯蓄も少しはありますが、仕事を辞めざるを得ない状況となったときの住居費などを考慮すると、老後の生活には全然足りません。このままでは老後に破産が待っています。

正社員とこんなに違う…非正規社員の「年収」格差問題

国税庁が2022年秋に発表した「2021年分(令和3年分)民間給与実態統計調査」で、正社員と非正規雇用者の平均年収の違いをみてみましょう。

 

【正規労働者】

男女の平均給与:508万4,000円

男性の平均給与:569万9,000円

女性の平均給与:388万9,000円

 

【非正規労働者】

男女の平均給与:197万6,000円

男性の平均給与:266万8,000円

女性の平均給与:162万3,000円

 

非正規雇用者の年収と一口にいっても性別や年齢、仕事の内容や環境によってもさまざまな違いがあります。ですがこのデータだけ見ても、正社員と非正規者の給与には大きな差があり、あらためて格差の大きさがわかります。そして、これだけの収入では貯金や投資にまでとてもお金を回すことができません。

 

なお、厚生労働省には下記のような支援サイトがあります。参考にしてみてください。

 

就職氷河期世代の方々への支援のご案内|厚生労働省