【悲劇】いまなお残る「長男の嫁」という呪縛
家族の在り方の変化、それに伴い、介護に対する考え方にも変化はあります。
厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査』で、要介護者と介護者との関係をみていくと「同居」は54.4%で前回2016年調査から4ポイントほど減少。続柄ごとにをみていくと、「配偶者」25.2%→23.8%、「子ども」21.8%→20.7%、「子の配偶者」9.7%→7.5%などと、どの項目も減少傾向にあります。一方で「別居」の場合の続柄もみていくと、「別居の家族等」は12.2%→13.6%、「事業者」13.0→12.1%と、「別居はしているものの、家族の手を借りている」のみが増加傾向にありました。
子世帯、親世帯、ともに「家族とはいえ気を遣うから」と、別居を選択するも、いざ介護が必要となった場合には、近くに住む家族を頼る、といったケースが増えていると考えられます。
また同居の場合の介護者は「男性」が35.0%、「女性」が65.0%と、圧倒的に女性の介護者が多いという結果に。配偶者の介護の場合女性のほうが男性よりも平均寿命が長いことが関係しているでしょうし、親の介護となると有業率の低い女性のほうが、というケースが多いと考えられます。
――これじゃまるで奴隷
そう投稿したのは、要介護2の義父を自宅で介護しているという50代後半の女性。義父は徐々に認知症が進行しており、ときに罵声を浴びせられることもあるとか。まだ現役で会社員を続ける夫はなかなか時間を割くことはできず、「妻にまかせっきり」という状態が1年以上も続いているといいます。
父親の年金収入は毎月20万円ほど。厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均年金額は65歳以上男性で平均17万円ほど。それに比べて十分すぎる年金を手にしている義父。貯蓄もそれなりにあり、経済的に困っていることはないといいます。夫と「義父を施設にあずける」ことも検討してみたものの、親族から「長男の嫁」を理由にたしなめられたといいます。
――古い考えが残る地方だから
そう諦め気味の女性。いつまで続くか分からない介護生活は、体力的にも精神的にも限界に近いといいます。前出の厚生労働省の調査で介護時間が「ほぼ終日」となる同居の場合の介護者と要介護者についてみていくと、「夫を介護する妻」が最も多く40.9%。「親を介護する子ども(女性)」が19.8%。「妻を介護する夫」が14.0%、「親を介護する男性の子ども」が11.8%と続きます。
一方で「義親を介護する妻」が7.3%と、この数年で4ポイント以上もダウン。しかし「義親を介護する夫」の割合はわずか0.4%。「義理の親に介護が必要となったとき、子ども夫婦で面倒をみる」というのは珍しいパターンではありませんが、圧倒的に「嫁」が介護にあたるケースが多いことがわかります。
また高齢化が進み、介護サービスや介護施設を利用することへの抵抗感はほとんどなくなってきているといえますが、需給が逼迫し、介護サービスを受けたくても受けられない、介護施設に入りたくても入れない、といった「介護難民」の問題も深刻化しています。介護する側も介護される側も、頭の痛い大問題です。