独身女性の住宅ローンリスク
筆者には10年ほど前から独身女性のマンション購入のための住宅ローン相談も増えてきました。
背景には、
・老後の安心のため、住み続けられる住まいを持ちたかった。
・マンションは資産として有利だと聞いたから。
・賃貸だと家賃がもったいない。
といった理由があります。たしかに納得の理由です。とはいえ、結婚している女性は夫婦で力を合わせて返済もできますが、独身ですと当然ながら1人で返済していかないといけません。
また、夫婦の場合、夫に万が一のことがあっても団体信用生命保険でローンの負担なく妻は住み続けられますが、独身女性は自分の責任で完済しないと住み続けられません。終身雇用制度が崩壊したといってもいいいま、Aさんの事例からもみてとれるように、独身女性は特に慎重に「生涯の住まい」と「仕事」について考えていかないといけません。
「家を買おう」と思っている時期は誰もが収入や仕事に不安のない時期ですから、将来のことをあまり考えず(考えているようで考えていない)に買う人も多いのですが、将来の収入ダウンや老後の生活も考えて返済金額や期間を決定する必要があります。
Aさんは6,000万円の変動金利型ローンを利用しており、毎月の返済額は約16万円ということでしたが、返済を始めてまだ3年しか経っていません。ローン残高は5,500万円以上もあるのと、返済完了の年齢は71歳です。この残高を60歳までに完済しようとするといまと同じ金利でも毎月の返済額は約24万円となります。長期のローンで返済額が抑えられ、いまは無理がないと感じているだけです。このままでは破産に直面します。
Aさんは住宅ローンの返済には不安がないと思っているようでしたが、金利上昇やインフレなど将来のことを考えて余裕のあるうちに繰り上げ返済を検討したほうがいいでしょう。
また、高齢になってくると高階層での暮らしは不便になってきます。降りるのも億劫になりますから部屋に閉じこもりきりになる危険性もあります。「高齢になると住居の確保が心配だ」、という理由で住まいを購入する人もいますが、高齢になったときのことをよく考えれば高階層での住まいは選ばないでしょう。
Aさんのお住まいは都心で資産価値もあり、当面は売却しても損はしないでしょうが、地方だと人口減少の影響で価値が下がっていく危険性があります。
また、マンションでは修繕積立金のアップに気を付けてください。修繕積立金は銀行の預金口座に預け入れられるのが普通です。超低金利のいまはほとんど増えることはありませんので、人件費や材料費などの値上がりについていけません。いざ、修理となった場合、一時金などでまとまったお金を請求されたり、積立金が上がったりすることは十分考えられますから、家計に余裕がないと住み続けるのも大変になります。
購入前に相談してくれる方は本当に助かるのですが、購入後に急に不安になって相談にやってくる方も意外にも多いのです。「借りられる金額=返せる金額」とは限りません。高い買い物ですから、購入前の相談や生涯のマネープランをご検討のうえ、住まいの購入は決定するようにしましょう。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表