月給43万円、退職金2,142万円でも「ゆとりがない」という現実
人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』では、定年後の生活で「ゆとりがない」と回答したのは、独身者で37.0%、夫婦二人世帯で38.0%でした。国家公務員はエリートと言われる職のひとつですが、それでも3人に1人が「生活にゆとりがない」という状況です。
人事院『令和3年国家公務員給与等実態調査』によると、国家公務員(行政事務)の平均給与は月43万2,622円(平均年齢42.6歳)。また令和3年12月の12月期期末・勤勉手当の平均65万1,600円ということから考えると、平均年収はおよそ650万〜700万円程度です。
また内閣官房『国家公務員退職手当実態調査』によると、国家公務員の定年退職による退職金は平均2,142万1,000円。「老後2,000万円問題」などありましたが、実際は2000万円÷30年(65歳~95歳とした場合)=月5.5万円で、むしろ年金の上乗せとしては少ないくらいでしょう。計画的な老後への備えがないと預金が枯渇しかねません。
65歳定年延長で「国家公務員」の給与や退職金は?
2023年から、大きく変わる国家公務員の60歳以降の働き方。人事院の資料では「60歳に達した職員の給与例」が記され、定年延長後の給料は延長前の7割になり、60歳前の俸給・職務級が引き継がれて諸手当も出るとしています。ば59歳で月給50万円のキャリアは、60歳に達した日後の最初の4月1日にその7割の35万円になります。
退職金については60歳以降、定年前に退職した職員が不利にならないよう、当分は退職事由を「定年退職」として算定。また60歳定年になるまでの期間と定年延長の期間(定年延長前給与の70%になった後)を分けて計算する「ピーク時特例」が、当分の間は適用されます。
これからの世代は65歳まで働くことになりますが、それで終えず65~70歳まで年金を繰り下げて支給額を増やす、余裕資産を安定資産で運用する等のリタイアメントプランも重要でしょう。
冒頭の「退職公務員生活状況調査」では、『生涯設計について考えるようになった時期』についておよそ半数の人が「50代」と回答しているとおり、安定のイメージが強い公務員は、早いうちから老後の生活について考える人が少なく、その結果、定年後に「もっと早く知っておきたかった」と後悔している人が少なくありません。
50代になってから慌てて……ではなく、20代、30代のうちからシミュレーションを立ててみることを推奨します。
髙屋 亮
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー