例年、なりたい職業ランキングで上位にランクインする「公務員」。給与や待遇面から「安定」のイメージが強いですが、FP Office株式会社の髙屋亮FPは「先々まで考えたとき、必ずしも安泰とはいえない」と警告します。それはなぜか、詳しくみていきましょう。
月給43万円、退職金2,100万円の国家公務員〈生涯安泰〉を信じた結果…定年後に「ゆとりがない」の悲惨【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「生涯安泰」のイメージが強い公務員だが…

日本には、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、デジタル庁、復興庁という1府11省2庁の行政機関※が存在します。

※内閣官房「行政機構図(2022.7現在)」参照

 

中央の府省の他、多くは全国各地の地方支分部局などの出先機関等で働いています。国家公務員採用試験という狭き門を通過したエリートたちです。

 

しかし、先々まで見た時、公務員は「必ずしも安泰」とはいえないかもしれません。今回は人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』をもとに、実際に勤め上げた先輩の声から実状を読み取っていきます。

 

人事院の調査結果からみえた、公務員の「油断」

人事院は令和2年8月末から10月にかけて、国家公務員の高齢期雇用の在り方や職員の生涯設計に関する施策を検討するため、令和元年度の一般職国家公務員の60歳定年退職者を対象として、「退職公務員生活状況調査」を実施しました(有効回答率78.9%)。

 

調査結果として、主なポイントは以下の5点です。

 

① 約9割が定年後も働きたい

② 何歳まで就労希望かについては「65歳まで」が最多、次いで「働けるまで」

③ 定年後の9割が就業しており、就労先の8割は「国の機関の再任用職員」

④ 民間企業で働く人はフルタイムが9割だが、再任用の場合は約5割

⑤ 今後の不安は「自分の健康」、次いで「家族の健康・介護」が約7割

 

まず、①・②から見ていきましょう。9割が定年後も働きたい、できれば働けるまでという人が多い。これは何を表しているのでしょうか。

 

『生涯設計について考えるようになった時期はいつか』というアンケートでは、「50代後半」と答えた人が50%と最多です。定年直前まで特段不安がなく、あと数年と差し迫った事態になってようやく考え始めた人が多いことが見て取れます。

 

続く『定年後の生活や生涯設計について利用したものは』の問いには「先輩からの話」が最多の42%、次いで「再任用制度に関するパンフレット等」が37%です。③の通り、身近な再任用の体験者の先輩に聞き、再任用制度に関心を持った人が多いことが推察されます。

 

そして、『定年前にもっと知っておけばよかったと思うこと』は「年金・保険に関する情報」が54%、次いで「資産運用に関する情報」が35%、「税金・相続に関する情報」が30%です。これは、定年後の72%が就く国の再任用職のなかで、金銭面での不安を感じ始めているとみることができるでしょう。こうしたなか、定年後しばらくして「やばい、お金がない。でも対策が分からない……」という悲惨な状況に陥っている人が、少なからずいると予想されます。

 

④では「再任用先でフルタイムの人は5割」。これは定年退職で一区切りつき、自ら仕事量を減らしたいと思った人が多いようですが、その反面で定年時から一気に半減した収入にお金の心配を抱き始めた……と推察されます。

 

退職後の家計に関するアンケートでは、「ゆとりはないが赤字でもない」が最多のため、収入減に対して今後退職金をどう使うべきなのか。病気で治療費が大幅にかかったらどうするのか。その時に持つべき生命保険は……と、続いていることが回答から浮かび上がってきます。