本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について、日本と比較しながら紹介していきます。
「母をがんで亡くした女子高生」がオーストラリアの高校で勉強と週30時間におよぶ「看護助手のパートタイム」を両立した結果 (※写真はイメージです/PIXTA)

「両立は本当に大変でした。でも…」彼女が語ったこと

シフトも最初は週に1、2回だったが、人員不足から次第に回数が増えていく。昼食を食べながら宿題をする日もあったという。夜勤を終えてそのまま学校に行くこともあったが、

 

「私は高齢者介護が好き。自分のおじいちゃんやおばあちゃんを100人近くお世話しているような気持ちです」

 

と彼女は言う。

 

結局、12年生の3学期まで、介護助手としての仕事を2つ掛け持つことになった。後に彼女は言う。

 

「仕事も学業も基本的にフルタイム。だから勉強との両立は本当に大変でした。でも、12年生は何としても修了したかったので、仕事の一つはパートタイムに変更しました。学校もすごくサポートしてくれたので、スケジュールは何とかやりくりすることができました」

 

さらに彼女は次のように言う。

 

「自分に合った道を選ぶにはいろいろな科目を履修してみるのがよいと思います。10年生のときは医者になりたかったのですが、職業コースの科目を履修して、自分の選ぶ道は高齢者介護であることがはっきりしました」

 

イソベルはいずれ大学で看護師になる勉強もしたいと思っている。

 

彼女の経験は、職業教育の成功事例と言えるだろう。

 

 

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教育学博士
本柳 とみ子


公立中学校で26年間教鞭をとったあと、大学院で海外の教育について研究を始める。その後、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら研究を続ける。2012年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)