600万人以上いるとされる、ひとり暮らしの高齢者。支援・介護が必要となり、自立した生活が難しくなってきたとき、施設への入居というのも選択肢のひとつになるでしょう。しかし昨今、「老人ホームからの請求額に愕然とする」という事態が起きているとか。みていきましょう。
年金「月17万円」だったが…おひとり様高齢者が唖然とする「老人ホーム請求額」の残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホーム…数百万円の初期費用に、十数万円の月額利用料だが

しかし、どんなに「昨今の老人ホームは素敵」といわれたところで、誰もが気軽に入れるかといえば、そうではなく、気になるのはやはりお金のこと。

 

老人ホームの費用は、初期費用のほか、月々の利用料がかかります。初期費用は家賃の前払いに相当する入居一時金や敷金などの費用のことで、ホームや居室ごとに異なりますが、数百万~数千万、最高級となると億単位のところも。ただ介護付き有料老人ホームでは、初期費用を抑えたゼロ円というところもあります。また月額利用料の内訳は、家賃、共益費・通信費、生活支援サービス費、食費など。

 

厚生労働省によると、施設サービス自己負担の1ヵ月あたりの目安として、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、要介護5の人が多床室を利用した場合で月々約10万4,200円、ユニット型個室を利用した場合で約14万1,430円としています。

 

また総務省が高齢者施設入所者に行った調査によると、入居一時金は平均260万円程度、施設からの請求額は平均月12万円程度、そのほか個人的な支出として平均月2万円程度だったといいます。ただし本調査は回収数が少ないことに留意する必要があるとしています。

 

また医療費や自身で使う日用品等は、利用するごとに別途費用が発生します。介護サービスが付帯しない施設では介護サービスも自己負担分の費用が必要になるので、プラスα見積もっておくと安心です。

 

月々十数万円程度という、老人ホームの請求額。一方、厚生年金受給者の平均年金額は月14万円、65歳以上男性に限ると月17万円程度。年金受給額の平均値で、老人ホームへの利用が叶うという水準です。

 

しかし昨今、「老人ホームの請求額に驚愕」という事態が増えています。それが昨今の物価高騰。株式会社TRデータテクノロジーが昨年11月時点の情報をもとに、老人ホームの月額費用の値上げの分析を行ったところ、月額費用の値上げに踏み切ったのは全体の23%。管理費の平均値上げ額は6,280円で、値上げ率は9.5%、食費は4,370円で値上げ率8.7%でした(2022年1月と11月の比較)。

 

老人ホーム等の月額費別の値上げ結果は、「月額費10万円未満の施設」で管理費35.6%、食費6.0%、「10万~20万円の施設」で管理費15.4%、食費7.8%、「20万~30万円の施設」で管理費5.5%、食費11.1%、「30万円以上の施設」で管理費9.7%、食費6.4%の上昇。値上げ率は「月額10万円未満の施設」が最も高くなっています。

 

施設側も物価高騰分を値上げしていかないと運営もままならず、利用料の値上げは苦渋の決断。利用者のなかには「あてになるのは年金だけ」という人も多く、利用料の値上げは死活問題。さらなる値上げとなれば、「利用料の滞納」→「施設から退去」というのも現実味を帯びてきます。

 

安住の地を求めて施設に入ったのに……おひとり様高齢者の受難は続きます。