高い学歴があり大手企業に内定し、40歳で月収83万円となり、会社でも挫折することなく定年まで勤め上げ……いわゆる「勝ち組人生」を歩んできたSさん。しかしそんなSさんは老後への思慮が欠けており、想定していたよりも老齢年金の受給額や貯蓄額などの老後資金が足りず、気付けば老後破産の一途を辿ることになっていました。本記事ではSさんの事例とともに、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、理想の老後生活を送るためのライフプランについて解説します。
月収83万円だった元・エリート、「勝ち組人生」しか知らなかったが…65歳で「老後破産街道」まっしぐらの“トホホな転落劇”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代から老後を見据え、ライフプランを考えよう

(※写真はイメージです/PIXTA)
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現在の年金制度はマクロ経済スライドという方式が採られています。マクロ経済スライドとは、物価や賃金の上昇に合わせて年金額が変動しますが、年金加入者の増減や平均寿命の延びを考慮して調整されるという制度です。つまり、今後物価が上昇しても、物価上昇率と同じように年金額は上昇しないのです。

 

巷ではよく「年金額が少なくなる」といわれていますが、これには少し誤りがあります。年金額は増える可能性が高いのですが、現役世代の賃金と比べた所得代替率でみると、「水準が減少する」というのが正しいです。たとえば、仮に現在の現役世代の賃金が40万円のときに夫婦2人の年金額が22万円であれば、55%となります。

 

最新の年金の財政検証が2019年に行われましたが、所得代替率は現役世代の手取り賃金が35.7万円に対して、夫婦2人の基礎年金と報酬比例年金を合わせた22.0万円で、61.7%となっています。

 

今回のケースのように、日本では長いあいだ、物価上昇について気にすることがないくらい生活費が上昇することはありませんでした。そう考えると、老後の生活に備えた老後資金の準備はもちろんですが、後先を考えないお金の使い方を見直し、年金収入になったときのことを考えた生活水準を意識することも必要かもしれません。

 

ただ公的年金だけに頼るのではなく、ライフプランを考えて、老後どれくらいの費用が必要で、理想の老後生活を送るには、いまからどれくらいの資産が必要か考えておくことが大切です。

 

今回のケースでは、すでに老後生活を送られているので、生活費の見直しを行うことで少しでも支出を抑えることをご提案しましたが、まだ老後まで時間がある方は、老後資金の準備として企業年金や私的年金を確認しながらの準備が必要になります。

 

参考資料

総務省:2022年家計調査(家計収支編)二人以上世帯の年間収入階級別

厚生労働省:2019年財政検証結果レポート

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表