Hさんは65歳までにいくら資産を増やせる?
H家の可処分所得は約630万円前後ですから、そこから住宅費と生活費を引くと年間で貯蓄に回せるお金は164万円です。
Hさんは、「確定拠出年金」と「投資信託」、「現預金での貯金」を行っています。確定拠出年金額を月2.3万円(年27.6万円)、投資信託はつみたてNISAで年間40万円の投資運用を行えば、2023年末には240万円となります。現金では96万円ほど貯金額が増えます。
また、2024年からはNISAの制度が変更となることから、今後は現金で貯金している金額を減らし、年間100万円ほどをNISAで運用する予定です。
53歳のHさんは、仕事を完全に辞めるまであと12年あります。それぞれ運用していくと、65歳時点での資産は以下のようになります。
■つみたてNISA:元本240万円⇒4%運用で384万円
■確定拠出年金:元本1,081万円⇒4%運用で1,632万円
■新NISA(2024年から11年):元本1,108万円⇒4%運用で1,413万円
■現金:992万円
■退職金:1,200万円
資産総額は住宅を除いて5,621万円となります。
資産形成のおかげで、貯金を取り崩しても「ゆとりある老後」に
では、その後の資金繰りはどうなるでしょうか。
Hさんの年金収入は、老齢基礎年金と厚生年金、妻の老齢基礎年金を合わせると約269万円となります。年金以外の収入がなくなるため、支出の不足分は資産を取り崩して生活することになります。
生活費が変わらず28万円※だとすると、年間336万円かかります。ここに住宅の固定資産税10万円を加えると、支出は1年間で合計346万円です。269万円の収入に対し346万円の支出となりますから、年間77万円の不足分が発生します。
※ 物価上昇を考えないものとする
人生100年時代、仮に老後の生活が退職後30年(95歳まで)とすると、年間77万円の不足分を補うには30年で2,310万円の資金が必要です。しかし、Hさんの資産は5,621万円ですから、2,310万円を取り崩して使ったとしても3,311万円が残る計算となります。
もしも不測の事態で多くのお金が必要となった場合でも、回避できる可能性が高いといえるでしょう。
この結果を知ったHさんは「資産の増やし方もわかったので、正直『なんだ、こんなもんか』って感じですね。ひとまず安心です」と笑顔を浮かべていました。
まとめ…老後に必要な金額を知るには
老後に必要となる金額は、生活スタイルなどによって大きく変わってきます。そこで、自身の必要資金を知るポイントは
これでもしも不足分が出るのであれば、老後の生活があと何年続くのかを考慮し、その年数分医療費や介護費などの緊急予備費をプラスして確保するといいでしょう。なお、自宅の修繕費用やその他の費用がかかることが予想される場合は、それもプラスします。同じ年金収入でも、生活費が多くかかっている場合は不足分が大きくなるため、より多くの貯蓄が必要となります。
もし自身の年金額がわからない場合は「ねんきん定期便」を確認するか、もしくは年金事務所に問い合わせすると知ることができます。細かい計算が大変な場合は自身で無理に解決しようとせず、FPなどの専門家に相談することをおすすめします。
須藤 雅
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー