日本は超高齢社会と言われるが、寿命には男女差があり、高齢者のうち約6割を女性が占めているため、現在、国内で起きている現象は、単独高齢女性の増加といえます。ニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が単身高齢女性の実情について考察していきます。
増加する単独高齢女性とその暮らし…平均年収は男性より約70万円低く、3割が年収150万円未満 (写真はイメージです/PIXTA)

1―はじめに

「人生100年」という言葉が流布し、日本が「超高齢社会」であることは広く認識されているが、寿命には男女差がある。「令和3年簡易生命表」によると、平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳と、女性の方が6歳以上長い。また総務省「人口統計」によると、2023年2月1日時点の国内の人口(概算値)は、国内の65歳以上の高齢者約3,600万人のうち6割が女性である。85歳以上だと約7割、100歳以上だと約9割と、年齢が上がるにつれて女性の割合は大きくなる。

 

高齢化によって国内で起きている現象の一つは「高齢女性の増加」だと言える。さらに、核家族化や未婚化といった社会変化が重なった結果、国内では「単独高齢女性の増加」という現象が起きている。そこで本稿では、単独高齢女性が増えている状況と、その暮らしぶりについて報告したい。

2―単独高齢女性の増加

「令和2年国勢調査」によると、65歳以上で、世帯人員が一人の単独世帯は、全国で672万世帯(人)となった*1 。そのうち女性世帯は約441万世帯、男性は約231万世帯で、女性が3分の2を占める(図表1)。2010年からわずか10年の間に単独高齢女性は約100万世帯、単独高齢男性は約90万世帯増えた。背景には、長寿化や未婚率の上昇などがあると考えられる。

 

【図表1】
【図表1】

 

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、高齢者の単独世帯は今後も増え続けるが、女性がそのうち6割以上を占める状況は変わらない。単独高齢女性世帯は2030年には約500万世帯、2040年には約540万世帯まで増加すると見込まれている。国内の総世帯数に占める単独高齢女性世帯の割合は、2020年時点の8%から、2030年には9%、2040年には11%となる見込みである。

 

*1:国勢調査の「単独世帯」には、会社などの独身寮や間借り・下宿屋などの単身者も含まれるが、寮・寄宿舎の学生・生徒などは含まれていない。