日本は超高齢社会と言われるが、寿命には男女差があり、高齢者のうち約6割を女性が占めているため、現在、国内で起きている現象は、単独高齢女性の増加といえます。ニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が単身高齢女性の実情について考察していきます。
増加する単独高齢女性とその暮らし…平均年収は男性より約70万円低く、3割が年収150万円未満 (写真はイメージです/PIXTA)

5―男女別の家計の状況

これまでに、単独高齢世帯の年収には男女で大きな差があり、年金受給状況の違いや就業率の差がその要因となっていることを説明してきた。次に、年金生活者である無職の単身高齢世帯について、家計収支の状況を男女別にみていきたい。

 

全国家計構造調査から、性・年齢階級別に家計の状況をみると、男性の高齢層では、70歳代までは1ヵ月あたりの可処分所得を消費支出が約8,000~約1万9,000円上回る赤字となっている(図表5)。赤字分は、貯蓄を取り崩して生活していると考えられる。80歳代以上では可処分所得自体が上昇しており、家計収支も1万7,000円~4万2,000円の黒字である。

 

【図表5】
【図表5】

 

女性の高齢層では、同様に70歳代までは1ヵ月あたりの可処分所得を消費支出が上回る赤字であり、赤字幅は男性よりも大きい約1万7,000円~約2万4,000円となっている。男性よりも、貯蓄の取り崩しが大きいと言える。また80歳代以上では、男性同様に、可処分所得自体が若干上昇しており約4,000円~約7,000円程度の黒字となっている。

 

無職の単身高齢世帯では、70歳代までは、貯蓄を取り崩しながら生活している点は男女とも同じだが、1で述べたように、女性の方が平均余命が長いため、保有する貯蓄額によっては、男性よりも困窮状態に陥るリスクが大きいと言える。

 

6―貯蓄の男女別の状況

5では、無職の単独高齢世帯では、男女ともに70歳代までは家計の赤字を貯蓄で補っていること、平均余命が長い女性の方が、貯蓄が尽きるリスクが大きいことを説明した。そこで本項では、高齢層の貯蓄の状況についてみていきたい。厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査」によると、単独世帯の性・年齢階級別の貯蓄残高は【図表6】のような状況となっている。

 

【図表6】
【図表6】

 

男性では、「60~69歳」と「70~79歳」、「80歳以上」のいずれの年齢階級でも「貯蓄がない」が2割前後に上った。これに対し、女性で「貯蓄がない」と回答したのは「60~69歳」では約1割、「70~79歳」と「80歳以上」では約2割に上る。60歳代に限れば、男性よりも女性の方が非貯蓄層の割合は小さいが、女性の方が年収が圧倒的に低く、平均余命が長いことを勘案すると、女性の方が経済的リスクが高いと言えそうである。

 

従って、これまでにみた状況を総合すると、無職の単独高齢女性を中心に、今後、困窮状態に陥る高齢者が増える恐れがある。実際に、厚生労働省「2021年度被保護者調査」によると、生活保護の被保護世帯のうち単身高齢世帯は51.3%(1ヵ月平均837,379世帯)を占めており、5年前の46.6%(同758,787世帯)よりも構成比が上昇している。