投稿者の個人情報が特定され大バッシングを受けているにも関わらず、後を絶たない迷惑動画。ニッセイ基礎研究所の廣瀨涼氏が、なぜ次から次へと迷惑動画は投稿されるのか、考察していきます。
なぜ、炎上は繰り返されるのか…迷惑動画投稿がされてしまう構造を考える (写真はイメージです/PIXTA)

1―バイトテロ

アルバイト従業員が職場で迷惑行為を行い、SNSにその様子を投稿し炎上させることで職場や雇い主に大きな損害を与える通称「バイトテロ」という言葉が使われ始めたのが2013年。

 

あれから10年経過した現在、バイトテロに限らず、消費者が小売店や飲食店での迷惑行為や非常識な行動を撮影し、SNS上で炎上してしまうと言う事象が後を絶たない。炎上により、迷惑行為を行った者は巨額な賠償金を請求されたり、デジタルタトゥーとしてその行為がネット上に漂い続け、社会的制裁を受けることになるのは、今や周知の事実である。なぜ、このような炎上はなくならないのだろうか。

 

2―従来の炎上の構造

今でこそほとんどの者が何かしらのSNSを利用している現代社会だが、バイトテロなる従業員による迷惑行為の動画が投稿され始めた2012年は、Twitterの全年代での利用率はわずか15.7%であった。そのため、2012年当時はSNSにおける諸問題が今よりは表層化してはおらず、自分のちっぽけな独り言が拡散され社会問題につながるというような意識もなく、後先を考えずに軽率な迷惑行為の投稿がされていたように思われる。

 

だからこそ、それがたまたま大衆の目に留まってしまい、「炎上」という本人も思ってもいない結果が生まれてしまっていたのである。

 

SNS普及以前では、2ちゃんねるのような匿名掲示板において、ユーザーが特定の迷惑行為を題材にスレッドを立て、その場で迷惑行為を行った人の個人情報を特定するなど、今でいう炎上のような行為が散見された。また実社会においては、地域社会の目が迷惑行為を表ざたにし、且つその目が抑止力になっていた。

 

しかし、昨今ではSNSの利用者の増加に伴い、かつては匿名掲示板で行われていたような特定行為や、その迷惑行為をわざと拡散し、世間に注目させるために迷惑行為を表ざたにさせようとする者もいる。これは、正義感や迷惑行為を告発(リーク)することで得られる承認欲求がモチベーションとなっているが、一方でSNSが今やマスメディアのように報道の機能として定着しており、迷惑行為が投稿への抑止力にも繋がっているのである。このようなリスクや抑止力があるにもかかわらず、なぜ迷惑投稿による炎上は繰り返されるのだろうか。