若年層の間で増加傾向にある非正規雇用。経済基盤が不安定なケースが多く、さまざまな問題に直面します。ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が非正規雇用による経済格差と家族形成格差について考察していきます。
求められる将来世代の経済基盤の安定化…非正規雇用が生む経済格差と家族形成格差 (写真はイメージです/PIXTA)

4―高齢者の貧困と孤立…20年で生活保護世帯が倍増、氷河期世代の貧困は高齢期の孤立リスクにも

1|生活保護受給世帯の増加…20年前の2倍、約半数は高齢者世帯、年金パラサイトは生活保護へ

1990年代以降、生活保護受給世帯数は増加している(図表10)。足元では横ばいで推移しており、2021年度で163万世帯だが、20年前の約2倍となっている。リーマンショック以降は稼働世帯と見られる、その他世帯や母子世帯が増えたが、最近は、これらは減少に転じている。一方で高齢者世帯は増加し続けており、この20年で3倍に、全体の過半数を占める。なお、高齢者世帯のうち約9割が単身世帯である。

 

【図表10】
【図表10】

 

なお、厚生労働省「令和3年度被保護者調査」によると、生活保護の受給を開始した主な理由は1位「貯金等の減少・喪失」(44.1%)が圧倒的に多く、次いで2位「傷病(世帯主)」(18.4%)、3位「失業」(6.6%)と続く。なお、近年、「貯金等の減少・喪失」は増加傾向にあり、高齢単身世帯では49.7%(全体より+5.6%pt)占めて多い。

 

親の死亡等で親の年金をあてにできなくなった年金パラサイトは生活保護の受給に直結しやすい。また、貯金等の喪失で親が生活保護を受給するようになれば、経済的に独立できずに同居する中年の子も同時に生活保護受給へ移行することになる。

 

2|高齢者の貧困と孤立…近年、孤立死が社会問題化、団塊ジュニアの約15%が孤立リスクが高い層

高齢期の貧困は、近年、社会問題化している孤立死にもつながる。少し前のものになるが、当研究所の孤立予防に関する研究(2014年)では、孤立死は年間約3万件と推計している。高齢単身世帯の増加を背景に、今後、増え行く懸念が強い。当研究では、日頃の周囲とのコミュニケーション状況、人間関係や働き方といった価値観等を定量的に把握し、孤立リスクを測定したところ、孤立リスクの高い層は、就職氷河期世代の中核となる1971~1974年生まれの団塊ジュニア世代では15%(105万人)が相当した。

 

また、孤立リスクを高める要因には、男性、未婚や離別、夫婦の意思を重視する志向(夫婦間の依存性が高い考え方。配偶者と離死別後の影響が懸念)や、他人に干渉されることを好まない志向、ネットなど非対面の付き合いを好む志向、プライベートより仕事を優先する志向が強いといったものがある(図表11)。また、加齢や健康問題で自動車の運転が難しくなることで移動制約が生じ、他人とのコミュニケーションが減ることも孤立リスクを高める3。なお、高齢期の人生設計ができていないほど、孤立に対する不安が大きいという傾向もある。

 

【図表11】
【図表11】

 

*3:最近の高齢ドライバー問題を鑑みれば、高齢者の免許返納とともに相乗りタクシー等の交通網整備を進める必要がある。