手術をしたのに倦怠感が残る…長年悩んでいたAさん
心房細動と睡眠時無呼吸症候群は相互に深い関連性を持つことから、「不整脈と睡眠時無呼吸症候群の両方を治療して、初めて症状が改善される」というケースもあります。症例を紹介しましょう。
<症例>
60歳の男性Aさん。約10年間、慢性心房細動に悩まされており、主症状は「日中の倦怠感が強い」「頭がぼーっとして仕事に集中できない」「動悸がする」「動くとすぐに息が切れる」といったものでした。
近くのクリニックで検査をしても、心房細動しか悪いところは見つかりません。診察では、「10年くらい心房細動が続いているから倦怠感が強く、だから頭がぼーっとするのでは」言われたそうです。しかし、どうにも日中の倦怠感が辛いため筆者のクリニックを受診され、心房細動の治療のため、カテーテルアブレーション手術を希望されました。
幸いにも手術は成功。脈の乱れは消え、正常の脈拍に戻り、動悸と息切れも著明に改善しました。しかし、患者さんが最も悩んでいた日中の倦怠感や頭がぼーっとする症状は、未だ一向に改善されません。別のクリニックに行くと、「慢性疲労症候群」の可能性を指摘されたそうです。
筆者は当初、肥満体型の人がなりやすい睡眠時無呼吸症候群に、この瘦せ型のAさんがかかっているとは考えませんでした。しかし、念のため検査を行ったところ、なんと重度の睡眠時無呼吸症候群であることが判明したのです。
早速、「CPAP(睡眠中に特殊なマスクを装着し、無呼吸になった際に呼吸器が作動して、空気を強制的に送り込む装置)」を導入したところ、たちどころに日中の倦怠感や頭がぼーっとする症状が解消。見違えるように元気になり、患者さんは非常に感激されていました。
どの医師も長いあいだ睡眠時無呼吸症候群の可能性に気づくことができず、睡眠時の症状であるために本人すらいびきがひどいことや、夜間に低酸素状態に陥っていることに気づいていませんでした。
しかし、Aさんの場合、睡眠時無呼吸症候群と心房細動を合併していたため、カテーテルアブレーションだけではすべての症状を改善することができなかったのです。
このように、睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことで他の症状が改善するケースは、意外と多いものです。不整脈の治療を行う際には、慎重さが求められます。
桑原 大志
東京ハートリズムクリニック
院長
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】