生活困窮者の増加とともに、自己破産件数も増えています。その自己破産、4分の1は高齢者だといいます。なぜ高齢者は破産という結末を迎えてしまうのか。そこには高齢者を取り巻く厳しい実情がありました。みていきましょう。
月収12万円・73歳の非正規男性、死ぬまで働く覚悟も老後破産「もう、生きていけない」と最悪の結末を意識して (※写真はイメージです/PIXTA)

生活に行き詰まる高齢者に朗報…知っておきたい「繰下げみなし増額制度」

多くの年金生活者は生きていけないという事実。十分な貯蓄があればそれを取り崩して生活するということになりますが、誰もが十分な貯蓄があるわけではありません。そうなると現役を引退するのを諦め働き続ける、というのが現実的な選択肢となります。

 

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、70歳以上のパート・アルバイトの月収は12.4万円

 

*男性、正社員・正職員以外から算出

 

――貯蓄もないし、一生働く覚悟です

 

しかし年を重ねるごとに健康リスクは大きくなり、病気や怪我で働けなくなることも珍しくないでしょう。そうなるとあっという間に生活は行き詰ります。「もう生きていけない……」、となるわけです。

 

最悪の結末さえも意識する悲惨な状況。しかしセーフティーネットとなる生活保護は高齢者であっても申請可能。また、一定の条件をクリアしていれば、生活保護を受けていても老人ホームにも入ることができます。

 

さらに「まだ働くから」などの理由で年金の繰下げ待機をしていた場合、2023年4月からスタートする「特例的な繰下げみなし増額制度」を活用するのも手です。

 

これは70歳から80歳までの間に年金の受給開始手続きをする際、繰下げの申し出を行わなかった場合、請求時の5年前に繰下げの申し出があったとみなして年金額を支給する制度。これにより請求の5年前時点の増額率が上乗せされた年金額を受給できるようになります。

 

たとえば71歳まで繰下げ待機し、71歳の時点で年金を請求する場合を考えてみましょう。本来の年金額は年180万円だとし「繰下げ申出を行う」を選択すると、91万円が繰下げ加算となり、年額271万円の年金を手にすることになります。

 

一方「繰下げ申出をしない」を選択すると、5年さかのぼった時点で繰下げ受給の申出をしたと見なされ、15万円の繰下げ加算が加わり、年額195万円の年金を手にすることができます。さらに請求が5年前にあったものと見なされ、その5年間分の975万円を遡って一括受取となるのです。

 

突然生活苦に陥った高齢者にはありがたい制度改正。あくまでも年金の繰下げ待機をしていた場合に限りますが、使える制度として覚えておきましょう。