毎年、厚生労働省からモデル夫婦の年金額が発表されますが、それは片働きを前提としたもの。いまどきの共働き夫婦に当てはめると、思わずニンマリする年金額に……みていきましょう。
平均年金月22万円だが…65歳・元共働き夫婦「年金だけで暮らせます」とガッツポーズする「年金月額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦共働きで手にする月年金額

現在、厚労省が年金額例として公表している厚生年金受給者は、20歳から社会人の夫と、20歳から専業主婦というふたり。夫婦共働きが主流となり大学進学率も50%を超えているなか、このような夫婦は少数派です。仮に共に大卒夫婦で60歳まで共働きを続けるとどれほどの年金額となるのでしょうか。

 

仮に社会人になってから給与はずっと平均額*3。さらに国民年金を満額支給とすると、男性の平均標準報酬額は53万円、女性は41万円となります。そこから65歳から手にする年金額を計算すると、男性の厚生年金部分*4は10.8万円、女性は8.3万円。国民年金と合わせると、夫婦で月32.3万円手にする計算です。

 

*3:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より

*4*厚生年金は加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できるが、便宜上②のみで計算

 

65歳以上の無職の高齢者夫婦における、1ヵ月の消費支出は平均26万円ほど。毎月6万円ほどの黒字となる計算。「年金だけで余裕で暮らしていける」と、思わずガッツポーズをしたくなる年金額。なんとも羨ましい「勝ち組夫婦」というわけです。

 

勝ち組夫婦でも不安…老後の三大リスク

そんな勝ち組の夫婦でも、老後不安を掻き立てるリスクが大きく3つあります。

 

お金のリスク①

年金生活者の過半数は「収入は年金だけ」。足りない分は貯蓄を取り崩す、というのが一般的ですから、想定以上の長生きは貯蓄を食いつぶし、家計が成り立たなくなる、というリスクに直結します。

 

また昨今のような物価高も、収入源が限られる年金生活者には大きなリスクに。年金支給額が物価上昇分を超えれば問題ありませんが、今回の年金額の改正で叶わなかったように、期待はできません。さらに少子高齢化の進展で社会保障費の国民負担は増加。年金は目減りすることが予想されるなか、現行の数値を用いたシミュレーション以上の貯蓄がないと、老後破綻が現実のものになります。

 

健康のリスク②

年を重ねると段々と健康リスクが増大していくのは自然の摂理。厚生労働省によると、2021年、男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年。2019年の健康寿命との差は、男性で8.79年、女性12.19年。この間、病院や介護のお世話になることを考えておかなければなりません。

 

要介護・支援者となった際、誰がサポートするのかというと、多くが配偶者(妻)。ただ同じように年を重ねてきたなか、当然、介護・支援するのは体力的にしんどいでしょう。外部を頼れるだけの金銭的な余裕ももっておきたいものです。

 

孤独のリスク③

内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』で「ふだん親しくしている友人・仲間の有無」をたずねたところ、高齢者の14.6%、7人に1人が「ほとんど持っていないと感じる」と回答。また「昔の職場の同僚との付き合い」についても33.5%が「付き合っている人はいない」と回答しています。

 

年を重ねるごとに人付き合いが限定されていくのは自然なことかもしれませんが、家族とも離れて暮らしていると、社会からは一層孤立。最悪、「孤独死」という事態を招いてしまう可能性があります。

 

 

老後の3大リスク。お金以外の不安でも、お金で解決できるケースもあります。「老後の必要生活」から逆算して必要な貯蓄額を考えるだけでは不十分。何かあった際に「お金があれば解決できるのに」という後悔をしなくてもいいように、余裕を考えることが重要。そのためにも「健康なうちは働く」というのも1つの手だといえるでしょう。