(※画像はイメージです/PIXTA)

世界銀行は大半の国や地域について、2023年の成長率予測を下方修正し、世界経済がリセッション(景気後退)入りする可能性があることを警告しました。インフレによりモノの値上げが続き、貨幣価値が下がり、日々の生活を圧迫する厳しい現状のなか、家計を守るにはどう対処すればよいのでしょうか? FPの牧元拓也氏がわかりやすく解説します。

インフレに負けない資産運用の方法

家計状況を改善する方法は基本的に①収入を上げる、②支出を減らす、③資産運用で増やす、以上の3つです。収入を上げるのは不可能ではないですが、会社員がコントロールしやすいものではありません。また、支出を減らすことは最低限必要ですが、限界があります。ここでは資産運用という観点でお伝えいたします。

 

一般的に株式や投資信託などの有価証券、金・不動産などの現物資産はインフレに強い資産といわれています。株式の場合、企業はインフレの際に自社の製品価格を上げて収益を増やすことができます。不動産の場合、インフレによりモノの値段が上がり、お金の価値が下がる状況下では有利に働くと考えられます。

 

このようにインフレに強い資産運用といっても不動産投資や株式投資などさまざまありますが、ご家庭で実践しやすいのは、少額から始めることができ、投資先の分散が容易な投資信託での運用です。投資信託は、投資家から集めたお金で株式や債券に分散投資する運用商品です。分散される点も良いですが、なにより100円から始めることができるので実践しやすいです。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

世界銀行が2023年はリセッション(景気後退)する可能性を予測していますが、これまで世界経済は成長しています。世界株式の1973年〜2021年末までの約半世紀のデータを見ると、平均7%で上昇しています。10%上がる年、20%下がる年、30%上がる年などを繰り返し、年平均にすると毎年7%で上昇していた、というイメージです。

 

これには技術革新などのさまざまな要因がありますが、人口の増加が大きいと考えられます。2022年11月には、世界人口が80億になったと国連が発表しています。人口統計の予測では2050年頃には100億人になるといわれています。人口が増えると、それだけ食料や住む場所も必要になり、経済的な需要が生まれます。総合的に見ると世界中の企業の業績規模も拡大し、世界中の株価も上昇していくことが考えられます。

 

仮に今後の世界株式の上昇が7%ではなく5%だったとしましょう。その場合、Aさんが毎月3万円の積立を30年間行うとどうなるでしょうか。

 

投資した金額は1,080万円(3万円×12ヵ月×30年)ですが、30年後には2,500万円程度になっています。

 

もちろん、価格変動のリスクもあるので30年後に必ず2,500万円になっているというわけではありませんし、時間もかかりますが、それでも預金していたら1,080万円だったお金が倍以上になるのであれば充分にインフレ対策になるといえるのではないでしょうか。

 

購入方法としては、運用益が非課税になるNISA制度の活用や、60歳まで引き出すことはできないですが所得控除になるiDeCoを活用するのが良いでしょう。

 

一般的に生活費の半年から1年分の預貯金は不測の事態に備えて確保したほうが良いといわれています。Aさんの場合は毎月の生活費が40万円で預貯金が400万円ですので、インフレに負けてしまうからといって預貯金まで運用するのは得策とはいえません。1年分以上の貯蓄があるご家庭の場合は預貯金を活用して資産運用することも選択肢のひとつです。

 

資産運用を行う際に重要なリスクとリターンの考え方についてお伝えいたします。特にリスクへの正しい理解が大切です。リスクとは「損をしてしまう」、「値下がりすること」などとイメージされる方が多いと思いますが、実際は値動きの幅を指します。つまり、下がるだけでなく上がることも含めた振れ幅をリスクといいます。

 

世界株式を中心とした投資信託で運用する場合、6%前後のリターンが期待できますが、その際のリスク(振れ幅)は30%〜40%程度です。これは〇〇ショックや〇〇バブル崩壊などの経済的影響で株式市場が大きく下落する場合に、1年間でどの程度下がるかの目安になります。

 

仮に100万円を運用し、翌年に60万円になっても心理的に大丈夫であればリスクを取って株式中心で運用をしても良いですが、耐えられないのであれば運用額を減らすか、株式だけでなく債券などの安全資産も組み合わせて運用することをおすすめします。

 

いずれにしてもインフレが続くようであれば、預金として置いておくのもリスクとなるので、ご家庭に合った金額で資産運用を実践してみてください。

 

 

牧元 拓也
株式会社日本金融教育センター 

 

関連記事

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。

TOPへ