たったの5年…30歳未満・子ナシ妻の遺族年金受給期間
Sさんが遺族厚生年金を受給できるのは、夫が亡くなったとき、以下の条件を満たしている場合です。
1.夫は厚生年金保険の被保険者である
2.夫に生計を維持されていた妻である
3.夫は死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年以上、厚生年金保険の被保険者である
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。なお、報酬比例部分の計算において、厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。Sさんの夫は手取り38万円であるため、標準報酬月額50万円で計算すると、Sさんの遺族厚生年金は以下のようになります。
※平成15年4月以降の加入期間にて計算
納付要件を満たしていても、子がいない妻で夫が亡くなったときに30歳未満であると、5年間の有期年金となります。Sさんは遺族年金額を見てほっと安心したのもつかの間、受給できる期間は5年のみとなるため、5年間の合計で300万円程度となります。Sさんは夫が亡くなって辛い気持ちのなか、思っていたよりも短く少ない遺族年金に愕然としてしまいました。
同じ年齢でも子のある妻であれば、原則、子が18歳になった年度末までは、要件を満たすことで、国民年金の遺族基礎年金と遺族厚生年金、また、夫が亡くなったときに40歳以上の妻もしくは遺族基礎年金を受給しできなくなった時点で40歳以上の妻であれば、65歳になるまで遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受給できます。
ただし、遺族厚生年金には下記のいずれかに該当する妻(受給権者)は失権事由となります。
2. 結婚したとき(内縁関係を含む)
3. 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき
4. 夫が亡くなった当時30歳未満の「子のない妻」が、遺族厚生年金を受け取る権利を得てから5年を経過したとき
5. 遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取っていた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利がなくなり、その権利がなくなってから5年を経過したとき
※日本年金機構のHPよりSさんは「子のない30歳未満の妻」(上記4)に該当するため、遺族厚生年金は5年の有期年金となるのです。
再出発までの期間
Sさんの遺族厚生年金の受給が終わるのは31歳。人生100年時代であるなら、まだ人生の3分の1にも達していません。亡くなった夫との想いもありますが、妻自身の就労や再婚の可能性を踏まえ、5年の有期年金とされているようです。いろんな意味での再出発の期間と考え、前向きに生活してほしいという願いからでしょう。
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表