遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険の被保険者もしくは被保険者であった人が死亡した際、死亡した人や遺族が要件を満たしている場合に受給できる年金のことです。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類にわかれていますが、それぞれ受給条件が異なるといいます。本記事ではひと回り年上の夫を亡くしたSさんの事例とともに、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が遺族厚生年金の受給条件について解説します。
新婚早々の悲劇…手取り38万円・38歳商社マンの夫の急逝で受給する「遺族厚生年金」、26歳妻愕然「たった5年だけ!?」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

たったの5年…30歳未満・子ナシ妻の遺族年金受給期間

(※写真はイメージです/PIXTA)
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Sさんが遺族厚生年金を受給できるのは、夫が亡くなったとき、以下の条件を満たしている場合です。

 

1.夫は厚生年金保険の被保険者である

2.夫に生計を維持されていた妻である

3.夫は死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年以上、厚生年金保険の被保険者である

 

遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。なお、報酬比例部分の計算において、厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。Sさんの夫は手取り38万円であるため、標準報酬月額50万円で計算すると、Sさんの遺族厚生年金は以下のようになります。

 

50万円×5.481/1000×300月×3/4=616,613円(1円未満の端数50銭以上1円に切り上げ)
※平成15年4月以降の加入期間にて計算

 

納付要件を満たしていても、子がいない妻で夫が亡くなったときに30歳未満であると、5年間の有期年金となります。Sさんは遺族年金額を見てほっと安心したのもつかの間、受給できる期間は5年のみとなるため、5年間の合計で300万円程度となります。Sさんは夫が亡くなって辛い気持ちのなか、思っていたよりも短く少ない遺族年金に愕然としてしまいました。

 

同じ年齢でも子のある妻であれば、原則、子が18歳になった年度末までは、要件を満たすことで、国民年金の遺族基礎年金と遺族厚生年金、また、夫が亡くなったときに40歳以上の妻もしくは遺族基礎年金を受給しできなくなった時点で40歳以上の妻であれば、65歳になるまで遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受給できます。

 

ただし、遺族厚生年金には下記のいずれかに該当する妻(受給権者)は失権事由となります。

 

1. 亡くなったとき

2. 結婚したとき(内縁関係を含む)

3. 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき

4. 夫が亡くなった当時30歳未満の「子のない妻」が、遺族厚生年金を受け取る権利を得てから5年を経過したとき

5. 遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取っていた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利がなくなり、その権利がなくなってから5年を経過したとき

 

※日本年金機構のHPよりSさんは「子のない30歳未満の妻」(上記4)に該当するため、遺族厚生年金は5年の有期年金となるのです。

再出発までの期間

Sさんの遺族厚生年金の受給が終わるのは31歳。人生100年時代であるなら、まだ人生の3分の1にも達していません。亡くなった夫との想いもありますが、妻自身の就労や再婚の可能性を踏まえ、5年の有期年金とされているようです。いろんな意味での再出発の期間と考え、前向きに生活してほしいという願いからでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
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三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表