3―投資のプロやベテランでない限り、個別銘柄投資は資産形成に向いていない
これまで、資産形成に向いていない投機に該当する取引や商品の具体例について見てきた。本章では、資産形成をする際に、プロでない限り、個別銘柄投資は資産形成に向いていないことを紹介したい。
例えば、株式の場合、個別株1銘柄に集中投資したら、会社業績が好調であれば大きな利益を得ることもできるが、会社業績が不調とかで倒産とかすると、株式価値がゼロになり、投資金額すべてを失うことになりかねない。よほどの株式投資のプロやベテランでない限り、個別銘柄投資のリスクは高く、資産形成に向いていない。
より効率的に資産形成をするために、複数の銘柄、投資先の国や地域を分散する方法である資産分散がとても大切である。一般の個人投資家であれば、プロにお金の運用を託して株式などに少額から手軽に分散投資できる投資信託という手段を活用すべきであろう。現行つみたてNISA、新NISA(つみたて投資枠)、確定拠出年金制度(企業型DC及び個人型のiDeCo)等の税制優遇諸制度に採用されているような投資信託であれば銘柄分散は十分できているので、こういう集中投資リスクは基本的にない。
不動産の場合においても分散投資は重要である。もし、ワンルームマンション1戸のみに投資すると、投資したマンションで入居者がいなくなり、家賃をもらえなくなり、管理費等のコストだけが発生する可能性がある。また、ワンルームマンション等の現物不動産は換金性も低いので、急ぎで多額の現金が必要な時に困るし、急いで売るために値段が下がったり、市況が悪い場合は売れなかったりする。さらに、不動産に関する金融知識や一定以上の大きな投資資金が求められるため、一般の個人投資家にはハードルが高く、効率的でない。やはり、不動産のプロでない一般投資家にとって少数のワンルームマンション投資はリスクが高すぎて資産形成には向いていない。
一般の個人投資家には、複数の物件に効率良く分散投資をする方法として、REIT(Real Estate Investment Trust不動産投資信託、以下、リート)投資がある。
【図表4】は日本におけるJリート投資を簡単に図示したものである。投資法人は優良な複数の不動産物件(オフィスビル、賃貸住宅、商業施設、物流施設、ホテル等)を証券化したものをJリートとして発行する。投資家は株式に相当するリートに投資することで、実質的に数多くの物件の入居者から費用等を引いた利益の大半を分配金として定期的に受け取ることができる。また、Jリートは投資法人が不動産の管理・運用を不動産のプロに委託している。物件の入れ替えを適宜に行ったり、管理の効率化を図ったりするなど、物件全体の価値が増加していく仕組みがある。
銘柄選択と分散投資に気を付けながら、投資商品を長期的に持ち続ければ、投資からのインカムや価値上昇で、将来の参加者全員の利益合計がプラスと十分期待できる。資産分散の他に、分散投資には時間分散があるが、このレポートでは詳述しないので、以下のレポートを参照してほしい。
2022年7月19日「老後のための資産形成-確定拠出年金等で老後のために何に投資したら良いの か?-外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でのパフォーマンス比較」 https://www.nli-reseArch.co.jp/report/detAil/id=71804?site=nli