一家の生計を支えていた者が死亡したときに、残された家族が受け取れる「遺族年金」。その受取額を前もって把握している家庭は多くありません。本記事では、51歳で会社員の夫が亡くなった妻の事例とともに、FP1級の川淵ゆかり氏が遺族年金について解説します。
手取り32万円・51歳課長の夫、急逝…残された妻に追い打ちをかける無情な「遺族年金額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ねんきん定期便で「遺族年金額」はわからない!

ねんきん定期便で遺族年金の金額はわかりませんが、ざっくりと計算する方法はありますので、ご紹介します。遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金にわけて計算します。

 

まず、遺族基礎年金ですが、子(18歳未満または障害状態で20歳未満の子)がいる場合、777,800円(令和4年度の額)に次の額が加算されます。

 

・1人目および2人目の子の加算額各223,800円

・3人目以降の子の加算額各74,600円

 

つまり、Aさんのご家庭の場合は、777,800円+223,800円=1,001,600円となります。

 

次に遺族厚生年金についてみていきましょう。まず、ねんきん定期便で表示されている年金見込額は、「現在の加入条件が60歳まで継続した場合」ですから、Aさんのように60歳前で亡くなってしまった場合は、亡くなってから60歳までの期間分を差し引かないといけません。差し引かれる年金額は、次のように概算で算出することができます。

 

① 7,000,000円(年収)×0.55%×9年(51~60歳)=346,000円

 

さらに、①の金額を差し引いた後の3/4が支給されることになりますので、Aさんの遺族厚生年金額は、

 

② (1,200,000円-346,000円)×3/4=約640,000円

 

となります。ですから、Aさんの遺族年金額は約164万円(月額約13万7千円)となります。

 

しかし、この金額がずっと受給できるわけではありません。お子さんが高校を卒業すれば、遺族基礎年金部分はなくなってしまいます。しかし、遺族基礎年金がなくなってしまうことでの生活困窮を防ぐため、40歳以上の妻には、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が加算されることになっています。加算額は、老齢基礎年金の満額の4分の3である年58万3400円(2022年度)です。

 

末子が18歳の年度末を過ぎたときに40歳以上か、夫を亡くしたとき子のいない40歳以上の妻が65歳まで受給できる仕組みです。妻が65歳になると、自身の老齢基礎年金を受給できるため、中高齢寡婦加算はなくなります。つまり、Aさんの妻は、息子さんが高校を卒業すると、その後の遺族年金額は約122万円にダウンしてしまうことになります。

 

「子どもが大学進学で一番お金のかかる時期にこの金額はキツいです。受け取った生命保険などはできるだけ手を付けないように生活していくつもりです」

 

なお、上記の遺族年金の算出は、あくまでも概算です。各人のより正確な金額は、年金事務所や年金相談センターでのご相談をおすすめします。遺族年金の額を知っておくことは、万が一の備えとなりますし、生命保険に加入する際の参考にもなります。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表