一家の生計を支えていた者が死亡したときに、残された家族が受け取れる「遺族年金」。その受取額を前もって把握している家庭は多くありません。本記事では、51歳で会社員の夫が亡くなった妻の事例とともに、FP1級の川淵ゆかり氏が遺族年金について解説します。
手取り32万円・51歳課長の夫、急逝…残された妻に追い打ちをかける無情な「遺族年金額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

51歳の夫のもとへ届いた「ねんきん定期便」…内容を夫婦で確認

Aさんは51歳の代理店営業を行う課長職のサラリーマンです。Aさんの年収は約700万円、ボーナス部分を除いての毎月の手取りは約32万円。43歳のパート勤めの妻と13歳の息子と親子3人で、息子が生まれた際に購入した家で暮らしていました。

 

​(※画像はイメージです/PIXTA)
​(※画像はイメージです/PIXTA)

 

Aさんも50歳を過ぎ、見込額が表示されたねんきん定期便が送られてきました。将来の資金計画のため、妻とこのねんきん定期便の金額を一緒に確認し、話し合いを行いました。これまでの掛け金の状況により見込額は変わりますので、年収700万円の人達が同じ年金額とは限りませんが、Aさんの場合は、表示額から毎月の年金額は老齢基礎年金が約6万円と老齢厚生年金が約10万円となり、合計で月約16万円ということがわかりました。

 

「定年も延びるだろうから、65歳までは働けるだろう。もう少し増えるかもしれないね」

 

毎月の手取りが約32万円のAさんにとっては、この年金額では現在の収入の約半分となってしまい、不安な面もありましたが、家計の出費を見直すなど、定年までにやれることを話し合っていました。

頼りの夫が急逝!遺族年金額をみて追いうちの悲しみ

そんなAさん夫婦でしたが、ある日突然不幸が襲います。営業で車を使うことが多かったAさんが突然の事故で亡くなってしまったのです。まだ51歳。働き盛りにも関わらず、あまりにも早い別れとなってしまいました。

 

Aさんの妻は、まだ中学生の息子と2人きりになってしまい、これからの生活に不安を感じましたが、以前夫と確認したねんきん定期便の額を思い出しました。

 

「たしか遺族年金が16万円くらい貰えるはずだから私のパート収入と併せれば、なんとかなるかもしれない」

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

ねんきん定期便の金額を遺族年金の金額と思い込んでしまったAさんの奥さんは年金事務所の職員に提示された遺族年金の金額にショックを受けます。遺族年金の金額は、月額で約13万7千円。しかも、子どもが高校を卒業した時点で遺族年金額は減ってしまう、といいます。

 

「息子の大学費用は? 私の老後の生活はいったいどうなるのだろう?」

 

Aさんの妻は、なぜこのような勘違いをしてしまったのでしょうか。

50歳以上のねんきん定期便の見方

50歳以上になると、ねんきん定期便のフォーマットが変わり、下記のように「現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定しての年金見込額が表示されます。

 

Aさんのねんきん定期便には、

 

(1)老齢基礎年金:約78万円

(2)老齢厚生年金:約120万円

(1)と(2)の合計:約198万円

 

との記載がありました。この金額から、生前Aさんは妻と「約16万円の年金月額」ということを確認していました。

 

[図表]ねんきん定期便のイメージ

 

ですが、この金額は、あくまで「現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定しての見込額」であり、60歳までのあいだに役員退職等で収入がダウンしてしまった場合などでは、この見込額は変わってきてしまいます。見込額はあくまでも見込額であり、確定額ではありませんので、ご注意ください。