日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は87歳です。夫と年齢が近い場合、悲しいことに夫が先立つ可能性のほうが高いのが現状です。そのようななか、年金受給者は自分の死後、残された配偶者が受け取れる遺族年金額を前もって把握し、計画を立てておくことが重要になってきます。本記事では、年金で暮らしていたが、夫に先立たれてしまった妻の事例とともに、FP1級の川淵ゆかり氏が年金受給者の遺族年金について解説します。
夫婦2人で年金“月24万円”だったが…66歳夫が先立ち激減した「年金額」、65歳妻「これからどう生きていけば」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

仲良し高齢夫婦を突然襲った悲劇

Aさんは66歳で、65歳の妻と定年退職後のゆったりとした年金生活を過ごしていました。Aさんは現役時代、日本各地に支店を持つメーカーの管理職で、全国を転々とするいわゆる「転勤族」でした。Aさん夫婦に子どもはなく、しっかり者のAさんに対し、物静かな妻はずっと専業主婦で、夫の転勤先に付いて行って一緒に暮らすとても仲のよいご夫婦でした。

 

そのため、家などは持っておらず、Aさんが定年退職前から住んでいた賃貸マンションに住み続けており、「元気なうちはこのままの生活を続け、もうしばらくしたら老人ホームでも探そうか」と話し合っていたところでした。

 

そんなAさんが突然の病でこの世を去ってしまいます。働いた経験もなく、ずっと専業主婦で旦那さんを頼りに生きてきたAさんの妻は途方に暮れてしまいます。

年金受給者の遺族年金の額

Aさん夫婦はどちらも年金受給者で、生前、Aさん夫妻が受け取っていた年金の毎月の額は、夫が約17.5万円(基礎年金約6.5万円+厚生年金11万円)、妻が約6.5万円(基礎年金のみ)で、合計で約24万円という内容でした。Aさんの妻は「夫は毎月17万円以上も年金をもらっていたから、それほど大きくは減らないだろう」と深く考えずに年金事務所に出向きました。ところが職員から聞いた遺族年金の額にショックを受けます。

 

その金額は、なんと約8万円! 9万円以上も減ってしまうことになります。

 

Aさんの妻は愕然としました。「マンションの家賃、これからどうしよう……」

 

65歳以上の妻の遺族年金は次のように計算します。

 

妻に支給される遺族年金は、夫に支給されていた老齢厚生年金のうちの報酬比例部分の4分の3となります。これに妻自身の老齢基礎年金を合わせて受け取ることになります。Aさんは生前、約17万円の年金を受け取っていましたが、老齢厚生年金の部分は約11万円でしたから、11万円×3/4=約8万円となる訳です。

 

Aさんの妻が受け取る年金月額は、遺族厚生年金約8万円と自分自身の老齢基礎年金約6.5万円の合計約14.5万円となりますが、マンションの家賃はたしかに大きな負担になってきます。