予想よりも10年早く進んでいる「日本の少子化」
2022年、日本の出生数は速報値で79万9,728人と、1899年に統計を取り始めて以来、初めて80万人を割りました。この数値には、日本で生まれた外国人も含み、日本人のみであれば、77万人前後になるのではないかといわれています(日本人のみの数値は6月ごろ発表予定)。
以前から少子化はいわれているので、「何をいまさら」と思うかもしれませんが、岸田総理は「危機的状況だ」とし、「異次元の少子化対策」に意欲を燃やしています。
そこまで騒ぐのは想定外だから。政府の人口推計では出生数が80万人を下回るのは2030年代に入ってからとされています。つまり想定よりも10年も早く少子化が進行しているということなのです。
少子高齢化により、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障費が膨れ上がることを「2025年問題」といわれてきました。そして2040年には高齢者人口はピークに達し、現行のままでは日本の社会保障は破綻するとされ、「2040年問題」といわれています。
さらに「2054年問題」というのもあり、これは75歳以上人口が、この年まで増え続けるとされ、日本は「超々高齢化社会」を迎えるとされています。
2025年まではあと2年、それまでに有効な対策を打たなければ、2040年には社会保障が破綻、そして2054年には……この3つの問題は国家存亡の危機ほどのインパクトがあるとされ、早急な対応が求められてきたわけです。
そこに、少子化が10年も早く進行しているという事実。3つの問題は、すべて政府の人口推計をもとにしたもので、さらに猶予がないことが明らかになりました。もう、待ったなしです。
「韓国」の少子化問題…儒教的思想も要因に
日本以上に少子化が深刻な国が、お隣「韓国」です。2022年、韓国の合計特殊出生率は暫定値で0.78。世界最低水準だとされている、韓国の出生率ですがさらに前年を下回りました。韓国の少子化の原因として挙げられるのが、高い住居価格と高い生活費・教育費負担。一方で日本と同じく、賃金の低迷と、結婚してから出産が正という儒教に基づく結婚観なども要因とされています。
このような状況のなか、出産奨励金や保育費の支援、児童手当の導入など子育て世帯に対する所得支援政策に莫大な費用を拠出してきました。それにも関わらず、出生率の改善はまったくみられていません。
この子育て世帯中心の少子化対策、どこかで聞いたような……そう、日本で議論されている「異次元の少子化対策」。こちらもメインとして聞かれるのは、子育て世帯への支援。すでに韓国では「それだけでは効果がない」と実証済み。本当に“異次元”でなければ、日本の出生率のさらなる低下も、避けられそうもないでしょう。