がん保険加入者のなかでも、付加していることが多い『先進医療特約』。所定の先進医療を受けると通算2,000万円を限度に、掛かった治療費分を給付金として受け取れるという内容の特約です。しかし先進医療特約には、加入していても知らない人が多い驚愕の真相があると、CFPの谷藤淳一氏はいいます。41歳で肺がんを患った公務員の女性の事例とともにみていきましょう。
41歳公務員の女性、肺がん手術後に知って愕然…「先進医療特約」の落とし穴【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

使わない保険にお金を払わない

(※画像はイメージです/PIXTA)
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保険は本当につらい状況になったときに大きなお金を受け取って、「保険に入っていて助かった」と感じるために加入するものです。そういった意味では、今回の吉川さんの先進医療特約は、そもそも加入する必要があったのでしょうか。

 

まさにいま、来店型保険ショップなどで、がん保険に加入しようとしている方へお伝えしたいことが2つあります。

 

1.無駄ながん保険が家計を悪化

日本ではいま、経済的にゆとりがないという世帯が増えてきているといわれています。また、将来に対して経済的な面で不安を感じる人も増えてきていると思います。無駄な出費を抑えてお金を貯めたいと思っている人は少なくないのではないでしょうか。FPに家計相談をしたときに、よく話題になるのが無駄な保険料の節約です。ただ、そもそも無駄な保険は最初から入る必要がありません。

 

しかし一方では、収入が高くなり、貯蓄にゆとりができるまでのあいだ、必要な保険の存在は重要です。なぜならアクシデントが発生したときに、家計に追加出費のゆとりがないからです。がんになってしまったときに「治療費をまかなう貯蓄がまだ十分できていない」という状態に陥る可能性が生じてしまうのです。

 

がん保険加入時に、その必要性を十分認識したうえで、家計負担が大きくなり過ぎない前提で、必要な保障が得られるがん保険を選択していただきたいと思います。

 

2.使い方を知らなければ出番がないがん保険が増えている

実は、今回テーマとなった『先進医療特約』を始めとした、使い方を知らなければ出番がないがん保険が、以前よりも増えてきていると私は考えています。そしてその使い方は、がんになって主治医から治療の提案を受ける前に知っておかなければなりません。

 

初めてがんの宣告を受けた瞬間、頭が真っ白になり思考する力が失われ、その場で主治医の提案する治療をそのまま受け入れているということも少なくないと思います。

 

もし、先進医療を比較対象にしたいのであれば、メンタルにダメージのあるこのタイミングで動かなければならず、それをするにはあらかじめ情報を知っていることが必要です。今回の吉川さんのように、治療が終わってから知ることは、とても辛いことであるかもしれません。

 

万が一がんになってしまったときに、主治医からの治療提案だけでなく「私はほかの治療と比較してから納得して治療選択する」という強い意思がないのであれば、先進医療特約は不要な保険となります。なぜなら、がんになったときの治療費への備えになっておらず、家計収支を悪化させているからです。

 

一方、治療を決める場面で治療を比較して選びたい場合、そのために必要な情報をあらかじめ知っておく必要があります。先進医療特約を考えるときに、その保障の内容だけでなく先進医療の定義や受け方まで知って、初めて本当の保障になるということを理解していただきたいと思います。

 

本来吉川さんへがん保険を提供した担当者から、必要な情報が伝えられていることが望ましいのですが、恐らくそれはなされていなかったのだと思います。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
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この10年くらいのあいだに、新たにがん保険や医療保険に加入している方の大半は、その保障内容のなかに先進医療特約が付加されていると思います。是非この機会に、がん保険加入時に

 

・あなたはなぜ先進医療特約を選択したのか?

・先進医療の使い方まで説明を受け理解しているか?

 

を振り返ってみてください。

 

もし今回お伝えした先進医療の話について、まったく知らなかったということであれば、あなたのがん保険の担当者は、あまりがんについて知識を持っていない可能性があります。まさにいまがん保険を検討する方は、がんのことをよく知る担当者に相談することをおすすめいたします。

 

がん治療は、治療費など経済的なことだけでなく、情報戦の側面もあります。一度話を聞いた担当者があまりがんに詳しくないようであれば、別の担当者、別のお店で改めて相談し、慎重に判断することをおすすめいたします。

 

 

谷藤 淳一

株式会社ライフヴィジョン

代表取締役