がん保険加入者のなかでも、付加していることが多い『先進医療特約』。所定の先進医療を受けると通算2,000万円を限度に、掛かった治療費分を給付金として受け取れるという内容の特約です。しかし先進医療特約には、加入していても知らない人が多い驚愕の真相があると、CFPの谷藤淳一氏はいいます。41歳で肺がんを患った公務員の女性の事例とともにみていきましょう。
41歳公務員の女性、肺がん手術後に知って愕然…「先進医療特約」の落とし穴【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

2年前のがん保険の見直しで付加した「先進医療特約」

いまから約2年前、吉川さんは自宅から車で約20分のショッピングセンター内にある来店型保険ショップへ、がん保険見直しの相談に行きました。

 

吉川さんは高校生のころ、父親をがんで亡くし、母親からは「がん保険は絶対に入っておきなさい」と強くいわれていたので、就職してすぐがん保険に加入しました。しかし加入から15年以上が経過し、母親から定期的な見直しを勧められたことで、新しいがん保険に切り替えました。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

お店でがん保険の保障内容をひとつずつ説明してもらっていた際に、目についた先進医療特約の文字。内容を聞いてみると、所定の先進医療を受けたとき、通算2,000万円を限度に掛かった金額を払ってくれるということでした。

 

がんは治療費が数百万円におよぶこともあると聞いたことがあった吉川さん。この保険があれば、お金を気にせずにいい治療を受けることができると考えました。

 

「これは絶対つけたい!」吉川さんは、万が一がんになってしまったときに、お金を気にせず好きな治療が選べるよう、『先進医療特約』が付加された新しいがん保険に加入しました。

術後に思い出した先進医療特約の存在…なぜ主治医は先に教えてくれなかったのか?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

入院中、落ち着いたら保険会社にがん保険の請求をしようと思い、持参したがん保険の資料。保障内容を確認してみると、そこには『先進医療特約』の文字。もし先進医療の重粒子線治療を受けていたら、この保険から約300万円のお金が支払われたのかもしれない。

 

「せっかく入っていたのに、なんで使うことを考えなかったのだろう……」

 

吉川さんは思いました。吉川さんが受けたのは標準治療の手術でした。それは健康保険が適用され、退院時の入院費用の見積もりは10数万円ということで、想像していたよりも高額にならないようです。

 

思い返してみると、「主治医から肺がんの宣告を受けて治療に関する話になったとき、先進医療の話題にはならなかった気が……」

 

手術の提案を受け、ほかに選択肢もあるとは思わず、そのまま「お願いします」と吉川さんは答えました。もしそこで話題になっていたら、がん保険の『先進医療特約』の存在を思い出していたかもしれない。そうしたら、手術による体へのダメージや、肺の一部を失うこともなかったかもしれない。

 

どうして主治医は選択肢として先進医療のことを教えてくれなかったのだろう。

 

・主治医が先進医療のことを知らない?

・主治医が意地悪している?

 

吉川さんは少し不信感が沸いてきました。