がん保険加入者のなかでも、付加していることが多い『先進医療特約』。所定の先進医療を受けると通算2,000万円を限度に、掛かった治療費分を給付金として受け取れるという内容の特約です。しかし先進医療特約には、加入していても知らない人が多い驚愕の真相があると、CFPの谷藤淳一氏はいいます。41歳で肺がんを患った公務員の女性の事例とともにみていきましょう。
41歳公務員の女性、肺がん手術後に知って愕然…「先進医療特約」の落とし穴【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

先進医療は「実験」段階の治療方法

がん保険を検討している人のなかには、がんになると一度に数百万円単位のお金が掛かるというイメージを持っている人が少なからずいます。そして『先進医療』という治療に対し、いままでの治療では治すことができなかったがんを治してくれる、夢の新しい治療という印象を抱く人も少なくありません。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
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先進医療について考えるときに、まず知らなければいけないことがあります。それは、先進医療が将来的に健康保険適用にするかどうか検討中の「実験治療」だということです。よい治療である可能性があるが、「よい」と判断するにはまだ早い(十分な治療成績が得られていない)段階の治療で、今後「いい治療とはいえない」と結論づけられ、先進医療から指定をはずされるケースもあります。反対に先進医療として治療を行ってきた結果、いい治療だと結論付けられ、その後健康保険適用となり安価な治療費負担で受けられるようになったがん治療も存在します。

 

先ほど例に出てきた『重粒子線治療』ですが、現時点では肺がん治療に関しては先進医療ですが、前立腺がんなど、一部のがんにおける治療においては、数年前から健康保険適用となっています(2023年2月1日現在)。先進医療特約に加入する際には、これを大前提として知り、本当に加入する必要があるかどうか、よく検討することが大切だと私は考えています。

 

なぜ先進医療特約をつけたのか?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

吉川さんはがん保険を切り替える際、先進医療特約について、なぜ「これは絶対つけたい!」と思ったのでしょうか。それはがんになってしまったときに、先進医療も治療の選択肢に加えたかったからです。

 

その治療を選択することにより治る可能性が高くなるのであれば「お金を気にせず選べるようにしたい……」そう考えて先進医療特約に対しお金を払っていくことにしました。でも実際肺がんになってしまった今回、先進医療特約の出番はありませんでした。

 

主治医から手術をすすめられたとき、先進医療が比較対象になることもありませんでした。そしていま主治医のすすめに従って手術を受け、ベッドで療養しています。基本的に治療は終了したので、これから先進医療を受けることはありません。手術を受けるかどうか判断する時点まで時間を戻すこともできません。

 

ですから『先進医療特約』に対して、毎月払ってきたお金は無駄だったということになります。吉川さんが自分でつけたいと思って選んだ先進医療特約は、なぜいざというときに選択肢になることがなかったのでしょうか。

 

先進医療は「自分で受けに行くもの」

お金を払って先進医療特約を付加するのであれば、先進医療の定義とともに、必ず知っておかなければならないことがあります。それは先進医療は「自分で受けに行かなければ受けることができない」ということです。なぜなら基本的に主治医から提案されないからです。つまり、それを知らなければ、いざというときに選択肢になりません。先進医療特約は、使い方を知らなければ入ってはいけないがん保険ともいえます。なぜそうなるのでしょうか?

 

吉川さんは、主治医が

 

・先進医療のことを知らない?

・意地悪している?

 

と不信感を感じましたが、それは誤った思い込みといえます。

 

主治医が提案する健康保険が適用となる治療は、すでに治療効果や安全性などに十分な根拠(エビデンス)が得られていて、がん患者さんへ最も推奨されるべき治療であると国が承認している治療です。つまり日本の医療現場においては、健康保険適用の治療が最もいい治療という位置づけになっています。

 

先ほど述べたとおり、先進医療はまだ実験段階の治療です。ですから主治医から先進医療がすすめられることは基本的にありません。もし主治医が提案する治療と先進医療を比較したければ、自分で先進医療を行う病院へ行き、先進医療を行う医師に直接話を聞く必要があります。

 

そもそもこうした知識や情報がなければ、先進医療特約に払ってきたお金が無駄金になってしまうという現実があります。