日本人の約4割が加入しているといわれる、がん保険。「掛捨型」は払い損というイメージの強さから、「貯蓄型」のがん保険を選ぶ人もなかにはいます。本記事では、「がんにならなかったら払った掛け金が全額戻ってくる」という一見、魅力的ながん保険に加入した女性の事例をCFPの谷藤淳一氏が解説します。
介護離職の元金融・41歳女性…生活苦で「貯蓄型がん保険」解約も「まさか自分が大腸がん」の悲劇【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

同僚の乳がん罹患を機に「がん保険」加入を検討した40歳の佐藤さん(仮名)

大阪在住、大学卒業以来ファイナンス会社で総務の仕事についていた、当時40歳の佐藤裕子(仮名)さん。約1年半前、同期入社の同僚が乳がんになり、自分もそれまで備えをしてこなかったことに対し「がん保険入ったほうがいいのかな……」と思うようになりました。

 

勤務先の最寄り駅近くにある来店型保険ショップで仕事帰りに相談担当をしてくれたのは20代と思われる女性スタッフ。さまざまながん保険のパンフレットを並べてひととおり説明してもらいました。「いかがですか?」と聞かれるも、正直あまり違いがわからない。「毎月の負担(保険料)が軽いもので、ひとつくらい入っておこうかな……」と思っていたところ、ふと目についたひとつの商品がありました。

 

「がんに罹らず、使わなかったらいままで払ったお金が全額戻ってくる」という謳い文句のがん保険。40歳の佐藤さんがいま加入して、70歳まで毎月8,000円(保険料)を払っていき、そのあいだにがんになって保険を使うことがなければ30年間の支払い(保険料)総額288万円が、すべて私の手元に戻ってくる、そんな内容です。

 

「保険ってふつう『掛け捨て』などといって、なにもなければ払い損というイメージだけど、これならむしろ払っていく楽しみがある。よしっ、これに決めた!」佐藤さんはその日に契約をしました。

やむなく介護離職となり、収支状況が一変

それからの佐藤さん、特に何事もなく日々を過ごしていました。30年後の288万円払い戻しに向けて、がん保険も継続中です。

 

そんなある日、同居の70代の父親が突然の脳梗塞で緊急入院。手術により、一命はとりとめたものの、重度の介護が必要な状態に。母はすでに他界していて、兄弟のいない佐藤さんは、仕事をしながら父の介護の負担もひとりで負うことに。よくよく確認してみると、父親の貯蓄はそれほど潤沢ではなく、このまま介護に費用が掛かれば、そう遠くない時期に底をつくことが確実な状況。佐藤さんが経済的な負担も追うことになりそうです。

 

仕事、家事、介護、そしてそれら全般の経済的負担、すべてをひとりで負担することは、想像以上に厳しく、佐藤さん自身も体調を崩しがちになりました。有給休暇や家族の介護で利用できる休暇制度などを利用しましたが、それらもすべて使い切り、とうとう介護離職という結果になってしまいました。

 

収入が激減し、貯蓄も取り崩す生活となった佐藤さん。先々のため、無駄な出費をカットしようと、家計の見直しを行うことにしました。そこで目に着いたのは、がん保険月8,000円。1年半前、がん保険に加入したときのことを思い出し、「これは掛け捨てではないのでムダな出費ではないのでは……?」と一瞬思いました。しかし「いま、30年後のことを考えている余裕はない」と思い直し、がん保険を解約することにしました。