高収入でも生活に余裕なし…それでも「奨学金」を活用できず
確かに、子どもが大学進学となると、教育費もワンランクあがり家計を圧迫します。それでも年収1,200万円もあれば問題ないだろう、と考えがち。しかし、収入が多くなれば普段の支出も多くなる傾向にあり、決して余裕があるとはいえない場合が多いようです。「節約すれば」と外野は簡単にいえますが、生活水準を下げるというのも、なかなか難しいものです。
さらに高収入サラリーマンには、高収入サラリーマンならではの悩みがあります。そのひとつが「奨学金」。ネックになるのは所得制限です。たとえば、よく知られた日本学生支援機構の奨学金には、大きく返済不要の「給付奨学金」と、返済が必要な「貸与奨学金」があります。
給付奨学金の進学前(予約採用)の家計基準として、第1区分~第3区分*までありますが、高収入サラリーマンは、はなから対象外(図表1)。
第1区分:学生と生計維持者の市町村民税所得割が非課税であること。具体的には、あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円未満であること
第2区分:学生と生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上25,600円未満であること
第3区分:学生と生計維持者の支給額算定基準の合計が25,600円以上51,300円未満であること
では貸与奨学金ではどうでしょう。まず利子のない「第一種奨学金」。進学前(予約採用)の家計基準として、給与所得(所得証明書等における控除前収入金額)が5人世帯で922万円が上限と、やはり対象外(図表2)。
では利子のある「第二種奨学金」ではどうでしょうか。こちらは5人世帯の上限が1,300万円と、家族構成によっては望みがあります。ただ子どもの1~2人だと難しいといえる水準です(図表3)。
もちろんこれらは目安であり、「年収1,200万円の場合、奨学金は利用できない」とは言い切れません。ただ利用できない可能性はかなり高いと言わざるをえません。
児童手当の所得制限撤廃の議論でも話題になっていた高収入サラリーマン。年収何千万円にもなる、まったくの別次元の人たちではなく、年収1,000万円を少々超えるような人たちは、世間が思っているほど余裕はない、というのが実態。
――家計が苦しいから、奨学金を申し込んでくれるか
大学進学にあたり、多くの家庭で奨学金の利用を検討しますが、高収入サラリーマンの場合、奨学金活用のハードルは高く、ただただ苦しい思いをするしかない、というのが現状。子どもの頑張りを素直に喜べないとは、なんとも哀しいものです。