おひとり様高齢者…4人に1人が「経済的余裕はない」
独身貴族……経済的・時間的にゆとりがある独身者へ羨望を込めた言葉です。内閣府『令和4年版 少子化社会対策白書』によると、50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合である「生涯未婚率」は2020年、男性は28.3%、女性は17.8%。もちろん、50歳を超えてから初婚というケースはゼロではありませんが、限りなく可能性が低く、男性の3.5人に1人、女性は5.6人に1人が「一生独り身」といっていいでしょう。
そんな独身貴族の行く末は、必ずしも幸せというわけではありません。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年』によると、「金融資産*を保有していない」と回答した人の割合は、60代で28.8%、70代で25.1%。ここでいう「金融資産」は「運用や将来に備えて蓄えている部分」。つまり経済的に余裕のないおひとり様高齢者は、4人に1人以上だといえます。
*本調査では「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えてい る部分は除く」としている
また「金融資産あり」と回答したおひとり様高齢者も、全員余裕があるかといえばそうでもありません。「金融資産あり」と回答したおひとり様高齢者の「金融資産保有額」は、60代平均で2,645万円、中央値は1,180万円、70代で平均2,396万円、中央値で1,380万円。もちろんライフスタイルによりますが、余裕のあるセカンドライフがおくれるだろうと考えらえる金額です。しかし「金融資産あり」でも保有額300万円未満という人たちが、60代で21.1%と5人に1人以上、70代で15.1%と6人に1人以上。たとえプラスαの資産があったとしても、すべての人が悠々自適とは限らないのです。
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、65歳以上の単身世帯、1ヵ月の消費支出は平均14万9,208円。一方、厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、高齢者の生活のベースとなる年金額は、老齢厚生年金で平均月14万5,665円。つまり「平均的なおひとり様高齢者は、年金だけでは生きていけない」ということになります。