不動産業者の転売物件に乗っかる「エグい利益」
多くの不動産投資初心者が不動産物件を購入するときには、不動産業者の広告やホームページを見て問い合わせる、セミナーに参加する、人の紹介等で営業担当者と会うといった方法をとっていると思います。
不動産業者が紹介する物件は、不動産業者が売主と買主との間に入ってマッチングさせるだけの「仲介物件」と、不動産業者が自社で物件を企画・建築するか、売主から買い取ってから転売する「転売物件」とに大別されます。仲介物件の場合、不動産業者が得る仲介手数料は法律で定められています(売り手、買い手双方から3%)。
一方、転売物件にどれくらいの利益を乗せて販売するかは、不動産業者の自由です。
皆さんは、転売物件に不動産業者がどれくらいの利益を乗せていると思われるでしょうか。
ワンルームマンション:1室の販売で1,200万円の利益
まず、ワンルームマンションのケースから考えてみましょう。
東京区部の新築ワンルームマンションを1戸販売すれば1,200万円、築15年のワンルームマンションでも、700万円もの利益が、不動産業者に入ります。
ワンルームマンション業者は、年収500万~600万円程度の会社員には「副収入」「年金にプラスした老後資金」といったトークで、また、年収1,500万円程度の会社員や自営業者には「節税対策」と称して売り込みをしていきます。
年収500万円の顧客がターゲットになった場合、1戸を購入した人には重ね売りをして平均2戸、年収1,000万円以上の高属性には4~5戸は販売しようとします。つまり、高属性の顧客をひとり捕まえれば、5,000万~6,000万円もの利益が得られるのです。不動産業者が熱心にマンションを販売したがるのも納得できます。
◆投資家目線で考えると…
では、投資家の立場から考えてみましょう。販売している不動産業者がこんなに高いマージンを取っている物件を購入して、投資として成り立つのでしょうか?
過去の記事で説明しているので詳細は省きますが、新築ワンルームマンションを3,500万円で購入して、利回り4%だとすると、年間キャッシュフローはマイナス15万円、つまり赤字になります。
また、中古物件を3,000万円で購入して利回りが5.0%だとすると、年間キャッシュフローはほぼトントンです。しかし、ちょっと空室期間があったり、大規模修繕などがあったりすれば、すぐに大赤字になるでしょう。
販売した不動産業者が高い利益を得ているということは、買った投資から見れば「相場よりも割高」で買っているということに他なりません。そのため、投資家に利益が出るわけがないのです。このような物件を(しかも数戸も!)買わされてしまえば、まさに不動産業者から見た「いいカモ」に他なりません。
新築アパート:1棟の販売で3,000万円の利益
次にアパート1棟投資の場合を確認します。
新築アパートの場合、不動産業者が土地を3,000万円で仕入れて、そこに4,000万円でアパートを建てて、それを1億円で投資家に販売するといった形が標準的です。1棟売れれば3,000万円の利益ですから、大きいですね。
筆者が面談した年収1,200万円の会社員の方は、高属性であったため、1億円の新築アパートをフルローンで3棟も購入「できてしまった」のです。銀行と不動産業者が連携していたためなのですが、いずれにしても、不動産業者はこの方への販売だけで1億円近い利益を得ているのです。
◆投資家目線で考えると…
一方、投資家の収支を見ると、1億円で利回り5%の新築アパートを購入した場合のシミュレーションで、年間キャッシュフローはほぼトントンです。
中古アパートを7,000万円、利回り7%で購入して、年間キャッシュフローはプラス100万円。4つのパターンのなかではもっともマシですが、それでも、不動産投資の成績としては非常に厳しいものだといえます。
公開情報から「買っていい不動産物件」を見極める方法
以上のことからわかるように、不動産業者の転売物件は、業者の利益が非常に厚く乗せられた価格で販売されています。不動産業者もビジネスである以上、利益を乗せて販売するのは当然であり、それが悪いというわけではありません。
ここでお伝えしたいのは、きちんとキャッシュフローが出せて、黒字になる不動産投資をしたいのなら、まず「誰から買うか」を考えるべきだということです。
「誰から買うか」といっても、一般には表に出てこない、いわゆる“川上”にいる業者や売主と特別なコネクションを作りなさい、といった話ではありません。
たとえば「楽待」「建美家」「at home」「HOME'S」等々、誰でも普通に見られる不動産ポータルサイトに掲載されている公開物件から、投資していい物件を見極める方法があるのです。
「相場への関心が薄いオーナー」を探す
公開されている投資物件の売主は、大きくわけると、
①不動産業者
②一般投資家
③相場に関心が薄いオーナー(主に高齢者)
の3つに分類されます。
①不動産業者も、②一般投資家も、物件を売る理由は、通常「利益を得る」ことです。そのため、どうしても販売価格は高くなります。逆にいうと、特別な事情がない限り、「安く売る理由がない」ともいえます。
一方、③相場に関心が薄いオーナー(主に高齢者)は、たとえば、相続したアパートを所有してきたものの、そもそもアパート経営に興味がない、あるいは管理が面倒といった理由から、処分して老後資金の足しにしたい、といった理由で手放します。そもそも売る理由が違うということです。
さらに、相続で物件を引き継いだ人のなかには、相続税の納税対策として、多少安くてもいいから早く売りたいという人もいます。
こういう人から購入すれば、安く買える可能性は高くなります。そして、こういう人は決して珍しくなく、意外なほどたくさんいるのです。
売主の判別のヒントは「登記簿謄本」にある
売主の①~③の割合ですが、筆者の感覚では、ほぼ3分の1ずつではないかと感じています。つまり、ポータルサイトに掲載されている公開物件のうち、3分の1くらいは、③相場に関心が薄いオーナー(高齢者)が売主の物件が含まれているということです。
ですから、特別なコネクションなどなくても、公開物件からそういった売主を探せばいいのです。それが、不動産投資で成功するための必須要件だといえます。
では、具体的にどうやって見つければいいのでしょうか?
そのヒントは、物件の「登記簿謄本」にあります。
まず、気になる物件があったら、その登記簿謄本を取り寄せてください。そして甲区の「所有者」を確認します。物件の所有者=売主です。
株式会社◯◯住宅とか、◯◯インベストメント株式会社といった法人が所有者なら、これは「①不動産業者」が売主です。
個人名、場合によっては合同会社などになっているのが「②一般投資家」が売主の物件です。このときは、この時は仲介業者に対し、売却理由やオーナーの人となりを教えてもらうといいでしょう。
そして、「③相場に関心が薄いオーナー(主に高齢者)」を登記簿からどうやって見つけるかですが、まず取得の原因が「相続」とあれば、これは相続で得た不動産であり、現所有者が投資目的で購入したものではないとわかります。
また、不動産の取得日(または登記日)が、たとえば30年前の日付だとしたら、これは高齢者だということもわかります。さらにお名前からも、ある程度その方の年代を推測できます。
このように、登記簿謄本は、その物件の所有者がどんな人なのかを知る情報の宝庫なのです。これを活用しない手はありません。そして実際、不動産販売業者も、これとほとんど同じような方法を用いて、物件を探しているのです。
「情報格差」を乗り越える
不動産投資の世界は、情報格差が非常に大きな世界です。
今回書いた内容も、ちょっとしたことではありますが、これを知っているのと知らないのとで、すぐ1,000万円、2,000万円の利益の違いになります。
たとえば、先に中古アパートの例で出した、7,000万円で不動産業者が販売しているアパートを、自分で登記簿謄本を使って探して、不動産業者の利益が乗せられていない5,000万円で購入することができれば、それだけで2,000万円の違いです。また、5,000万円で買えれば、投資利回りは年間10%、年間キャッシュフローは200万円と倍になります。どれだけ大きな違いになるか、実感できますね。
だからこそ、不動産業者のいうことをそのまま鵜呑みにして投資をしていては利益を生めないばかりか、場合によっては「カモ」にされてしまうのです。
ぜひ利益を生みだす不動産投資のヒントにしてください。
オスカーキャピタル株式会社
代表取締役社長 金田 大介