裕福な家庭に生まれ、現役時代は出世街道に乗って営業部長にまで昇り詰め、退職後は豊富な退職金と貯蓄で悠々自適生活を送っていたAさん。しかし、定年3年目で熟年離婚・破産の危機に陥ってしまうことになりました。一体Aさんになにがあったのでしょうか。1級FPの川淵ゆかり氏が解説します。
退職金2,000万円の70歳・元エリート営業部長…定年3年目で「悠々自適生活」から大転落のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

親に余裕がない時代、子どもの本当の独立とは

昭和の時代であれば、子どもは「就職すれば終身雇用」「結婚すれば永久就職」という時代で、それこそ子どもがある程度の年齢になれば親は安心できたものでした。

 

ですが現代は、いい大学を出して大企業に就職させたとしても「リストラ」、大恋愛で豪華な結婚式を挙げても「離婚」という事態が起きないとも限りません。どんなにお金をかけて育てても親の心配は尽きない時代になってしまいました。

 

インフレ・増税時代に突入したいま、投資にリスクを取れない高齢者にとっても自分たちの生活だけで手いっぱいになってきて、子どもや孫の生活まで心配する余裕はなくなってきます。子どもが学生時代のうちから、独立後のお互いの生活についてはしっかり説明しておいたほうがいいでしょう。

退職金を使ったリフォームや建て替えに注意!

Aさんは退職金を使ってリフォームを実行しましたが、定年後にリフォームしたり建て替えたりする人は多いものです。ですが、リフォームした家にいつまで暮らせるかも考えないといけません。

 

Aさん夫婦はいまは元気ですが、今後、介護や医療が必要になったとき、大きなお金がかかってきます。将来的に介護や医療も人手不足が進むことによる値上げは避けられませんし、老人ホームに入ることを考えているのであれば、こうした費用も事前に調べるようにしましょう。

 

住宅ローンの相談やセミナーのときにもよくお話をすることですが、家は一生に一度の買い物ではなくなってきています。長寿化により、リフォームや老人施設など、住まいに大きなお金がかかるタイミングが何度か来る時代になっていることも理解しましょう。また、今後は「空き家問題」も大きくなってきます。どんなにお金をかけてもお子さん達にとっては「迷惑な相続財産」にならないとも限りません。子どもに余計な負担をかけないように購入のときから考えておくべき問題です。

 

家計簿をつけていなかったため(つけていたかもしれませんが拝見させてはもらえませんでした)、正確な出費状況はつかめませんが、子どもの問題がなかったとしてもリタイア2年目の生活を続けていれば、やがては生活に窮していたと考えられます。現役時代は高収入で「節約」には無縁の人も多いですが、定年前から将来の生活をご夫婦で話し合うようにしておきましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表