超低金利や控除により住宅ローンを借りやすくなっている一方、返済計画の目算が狂い、家計破綻に陥る人が増えています。無理のない返済計画を立てるにはどうすればよいのでしょうか。手取り30万円の45歳、Aさんの事例とともに1級FPの川淵ゆかり氏が解説します。
「明日が怖い」…“手取り30万円”45歳・飲食チェーン正社員が陥った「住宅ローン破綻」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

予想より「借入可能額」が上回り、歓喜したAさん夫婦

Aさんはパートで働く妻と12歳と9歳の息子を家族とする都心に住む45歳の大手飲食チェーンの総合職です。約7年前に都心にマンションを購入し、楽しく暮らしていました。

 

ですが、順調な暮らしが続いたのもほんの数年。Aさんの家計は年々苦しくなっていきます。マンション購入時のAさんの年収は600万円、賞与を除き月の手取りは30万円でした。夫婦でパンフレットを見たりモデルルームを見に行ったりと夢が膨らむとともに、物件担当者に住宅ローンのシミュレーションをしてもらうと予想以上に借りられることがわかり、予算も大きくなっていきました。

 

「いくらぐらい借りることができるかなぁ……。3,000万円は借りたいなぁ」

 

Aさんはドキドキしながら物件担当者にシミュレーションしてもらいました。シミュレーションの結果は次のとおりでした。

 

・借入れ可能額:5,500万円(固定金利1.3%、35年ローン)

・毎月の返済額:約16.5万円(ボーナス返済なし)

 

予想以上に借りられることに歓喜し、自信までも感じたAさん夫婦は、借入れ金5,000万円(毎月の返済額約15万円)で、当初の予定よりもワンランク上のマンションの契約を行いました。

 

マンション購入後、しばらくは問題なく暮らしていましたが、下の子の成長とともに習い事の支出等も増えていき、生活に余裕がなくなっていきます。また、会社の業績も芳しくなく、Aさんは40歳を過ぎたころから昇給もストップしてしまいました。Aさんの奥さんは家計を助けるために、下の子が小学校に入ったのを機にパートに出ることにしました。

 

ですが、その後も新型コロナが会社の経営に影響し、Aさんはボーナスゼロや住居手当等の諸手当も減額されてしまいます。すでにAさんは45歳。転職しても収入アップは期待できない年齢です。

 

「リストラの対象にならないことを祈って毎日怯えながらも頑張っています。私はどこで間違ったのでしょうか?」