厚生労働省から発表された『毎月勤労統計調査』の速報で、賃金総額は上昇も、実質賃金は下落という、日本人のギリギリの状況が明らかとなりました。そこで注目されているのが、岸田総理の次の一手。みていきましょう。
まったく給与が増えません!平均月32万円、絶望の日本人に「岸田総理」の切り札は? (※写真はイメージです/PIXTA)

もう給与は上げられない…「資産所得倍増プラン」は現状打破の切り札になるか

政府が物価高を上回る賃上げを企業に要求したことを受けてか、最近、賃上げのニュースもよく耳にすることも。

 

――イオン、パートの賃金を7%引き上げ

――ファーストリテイリング、国内の従業員の年収を平均15%、職種によって最大4割引き上げ

――三井住友銀行、2023年の新卒初任給を5万円引き上げ

 

大企業の賃上げのニュースが連日報道されていますが、中小企業まで波及するかは難しいというのが現状のよう。また大企業からも物価高以上の賃上げは難しいという声も多く聞かれます。

 

失われた30年。賃金が下がり続けた日本。給与が上がっているものの、実感するのはまだ当分先のことか、それとも永遠に訪れることがないのか……悲観的な見方が大半を占めています。

 

出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』
【図表】実質賃金の推移※現金給与総額 出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』

 

給与は上がらず、それなのに物価は高騰……解決策が見出せぬなか、岸田総理が大号令をかけるのでは、と囁かれているのが、肝いりの政策としてたびたび話題となっている「資産所得倍増プラン」。

 

家計金融資産は2,000兆円といわれていますが、その半数が現預金で、株式・投資信託・債券などに投資をしているのは244兆円、投資家数は約2,000万人に留まります。また投資で増やすことが広まっている欧米では、たとえば米国では20年で家計金融資産が3.4倍に、英国では2.3倍になるとされていますが、それが日本は1.4倍。そこで、現在1年で15万円ほどの資産所得を倍にしようと目論んでいるのです。

 

計画の柱とされているのが、以下の7つ。

 

①家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化

②加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革

③消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設

④雇用者に対する資産形成の強化

⑤安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実

⑥世界に開かれた国際金融センターの実現

⑦顧客本位の業務運営の確保

 

ただしこのプラン、株価が持続的に続いていくことが前提となっていたり、そもそも投資に回す余裕がある人たちが限られていたりと、全国民に対してのメッセージとしてはお粗末と批判が集中。イマイチ浸透していないのが現状です。

 

しかし企業にお願いしても給与は上がらないし、物価高は世界的な潮流だし、少子化に高齢化と問題は山積みだし……政府も「もう、ムリ!」とすべてを放り出し、一人ひとりの自助努力に委ねることになるのではないか、ひいては、今まで以上に資産所得倍増プランをいま以上に推し進めていくのではないか、と、一部の専門家でいわれています。

 

日本国民でいることに絶望してしまいそうな状況ですが、開き直って資産所得倍増に乗っかってみるのか、それとも静観するか。選択を迫られています。