「相続争いは金持ち」だけは大間違い!庶民ほどトラブルに
――遺産を巡り、泥沼のトラブル
よく知られた金持ちが亡くなると、しばらくしてニュースで聞こえてくるのが相続トラブル。人の卑しい部分が垣間見られ、ついついネット記事などをみてしまう、という人も多いでしょう。
――いやあ、金持ちは大変だね
ニュースを読んでは、他人事のように感想をこぼすのがお決まり。しかし「相続トラブルは金持ちの話」というのは間違えた認識。相続はなにも金持ちだけの話ではありません。
人が亡くなれば、必ず相続は発生します。そして遺産に対しは相続税が課せられますが、最終的に多くの人は対象外に。そのため「相続=金持ち」というイメージが定着しているのでしょう。しかし相続されるのはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も。故人に借金があれば、遺族へと相続されます。
――父ちゃんの借金はお前のもんや!
遺族に詰め寄る債権者。映画やドラマだけの大げさな話ではなく、債権者は当たり前の権利を主張しているだけなのです(詰め寄り方によっては犯罪になりますが)。怖いと思うかもしれませんが、「その相続、拒否します!」と、「相続放棄」の手続きをきちんとすれば、ドラマのようなことにはなりません。
また負債がなくても、少しでも財産があれば、相続トラブルに発展する可能性は誰にでもあるといっていいでしょう。
裁判所『令和3年 司法統計年報(家事編)』によると、裁判所に持ち込まれた遺産分割事件で、遺産総額「1,000万円以下」は32.8%。3件に1件は、遺産1,000万円以下。一般庶民の水準だといえるでしょう。ちなみに「お金持ちのトラブル」といえそうな「遺産億超え」のトラブルは、19.9%と5件に1件程度です。
さらに遺産内容別にみていくと、「現金等+土地+建物」が35.6%、「現金等」が17.0%、「土地+建物」が14.7%と続きます。遺産総額別にみていくと、「遺産総額1,000万円以下」では、「現金等」が最も多く25.5%。「土地+建物」21.0%、「現金等+土地+建物」が19.0%と続きます。「遺産総額5,000万円以下」では、「現金等+土地+建物」が最も多く41.4%。「現金等」16.3%、「土地+建物」13.2%と続きます。
ここでいう「現金等」は現金のほか、預金や有価証券等のことをいい、遺産を換価した場合も含みます。そして「土地+建物」は、いわゆる“実家”も含みます。日本の持ち家率は6割強。多くの人が資産として家を持っていますが、その家の持ち主が亡くなったら、基本的に相続人同士でどのように分けるかを話し合うことになります。多くの日本人が、相続、遺産分割とは無関係ではいられない、ということです。
残された家族。生きていくには何かとお金がかかりますから、もらえるものなら1円でも多くもらいたい、と考えるのは普通のこと。そんな普通のことがぶつかり合い、トラブルへと発展するわけです。