離婚の際に生じる「財産分与」。「ペアローン」や「年金」についてはどうなるのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の代表、弁護士の水谷江利氏が解説します。
夫「貯金1,000万円」妻「貯金600万円」…離婚したらどうなる?【弁護士の概説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

年金分割について「3号分割制度」の注意点

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金加入部分について、夫婦でこれを分け合うものです。国民年金+厚生年金の2階建て方式のうち、2階部分のみを分けます。1階部分の国民年金を分けるものではないので、注意しましょう。

 

今は「3号分割」という制度がありますので、配偶者との合意がなくても3号被保険者の方(つまり、ずっと社会保険上の扶養にあった方)については、離婚後に年金事務所に行くと手続きをとることができます。

 

しかしながら、3号分割で分けることができるのは、「平成20年4月1日から離婚までの期間で、3号被保険者だった方」のみ。ですから、平成20年3月までの期間分については分けることができず、3号被保険者でなかった方(扶養はされていなかったが、配偶者と収入格差がある場合)については、3号分割の手続では年金を分割することができません。

「合意分割」をとる必要がある

これらの制限のため、「合意分割」による必要が多くあります。合意分割をするには、以下の3つの方法があります。

 

①離婚後にできたら夫婦が同席の上で年金事務所に行き、所定の用紙に記入して申請する

②年金分割について公正証書に記載してもらい(ただし、公正証書内に双方の生年月日、年金番号が記載されていることが必要)おって年金事務所に行く

③家庭裁判所で年金分割について取り決めてもらい、その成立調書をもって年金事務所に出す

 

年金分割は「2分の1ルール」と言われ、結婚はしたが同居の実態がほとんどなかったとか極端な場合を除いては、ほとんどが50:50で分けられるのが慣例です。

 

こちらの「合意分割」も、財産分与同様、離婚から2年以内に手続しないとできなくなってしまうので、よく覚えておかなければなりません。なお、年金分割の手続きをしても、実際にそれを受け取れるのは自分が年金受給年齢に達してからであり、分割した時ではありませんのでご注意を。