離婚の際に生じる「財産分与」。「ペアローン」や「年金」についてはどうなるのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の代表、弁護士の水谷江利氏が解説します。
夫「貯金1,000万円」妻「貯金600万円」…離婚したらどうなる?【弁護士の概説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

財産分与=夫婦の共有財産を「半分ずつ分けること」

財産分与とは、婚姻中に形成した「夫婦共有財産」を半分ずつにすること。「夫婦共有財産」というのは、結婚中に稼いで築いた財産。夫婦のどちらかが専業主婦または主夫の場合には、それは他方が築いて得た財産に対して「内助の功」があることになりますので、離婚時にはこれを半分にするのです。

 

具体的には、結婚時の①預金残高、②株式など、③保険の解約返戻金、④不動産、⑤車両、⑥ローンなど。これらの総資産に対して、別居時の①~⑥の総和を比較して、上昇額を出し、これを半分ずつに分ける(多いほうから少ない方にする)ことになります。

 

たとえば、結婚時の夫の預貯金が100万円、別居時が1,000万円で、妻の預貯金が500万円から600万円になっていれば、夫は900万円、妻は100万円の合計1,000万円増えていますので、これを500万円ずつ分けます。ですので、夫は妻に400万円(500-100)を渡すことになります。

ご相談の多い「ペアローン不動産」はどうするのか

財産分与のなかで、よく問題となるのが共有不動産、「ペアローン不動産」です。結婚に伴って共有で不動産を買うことも多いのですが、離婚したのになお共有にしていては、一方だけで売ることもできなくなります。そこで、共有不動産については、「売って分ける」か「寄せて分ける」かを決めていただくことが多いです。

 

売って分けるのは、文字通り当該物件を第三者に販売して、売却代金を分け合うこと。寄せて分けるのは、一方が物件の所有権(及び可能な限りローンも)を引き取り、半分を超えて引き取った部分について買い取り価格相当額(=代償金)を支払うことになります。

財産分与は離婚から2年の間でなければ、受け取ることができなくなります。

財産分与は、もらう方には贈与税はかかりません。

 

感覚としてつかみづらいのですが、金銭支払いに代えて不動産を譲渡した場合、譲渡した側に、金銭支払いを免れた利益として「譲渡所得税」が課税される場合があるので、こちらもご注意ください。