実際に、日程調整のためのアプリやフォームが使われている現状
昨今、面会交流アプリなるものがあるそうです。ウェブサイトには開発、運営に直接的に弁護士が関与したような表記はありませんが、代表者の方からのメッセージには、次のようにあります。
養育費をもらえないことは貧困や経験格差につながります。両親の離婚が子どものハンデになってはいけません。
そのような思いから生まれました。(中略)
そのためにも養育費と面会交流は子どもへのメッセージであり、継続したほうが良いと考えています(DVなどの理由で困難な場合を除きます)。
しかし父母の関係などによって、それを妨げられる場合があります。
本アプリはそれを解決します。
面会交流が大切であることや、そのために父母間の調整の困難が面会交流の妨げになっていることについて、問題意識を持っておられることがわかります。
筆者は冒頭記載のアプリを推奨する意図はありません。しかし、時代の流れと共に世に現れた、この「面会交流アプリ」について考えたいと思います。
この面会交流アプリですが、次第に、筆者が取り扱う事案の中で、実際にご当事者様方が利用を検討されたり、また、これに類する仕組み(既存のGoogle FormsやMicrosoft Formsなど)を用いる例も増えてきました。
筆者も、過去に調整のたびにけんかになってしまうお父様、お母様に対し、いわば飲み会調整ツールとして使われてきた「調整さん」や「伝助」を用いることを提案し、これによって「お二人の対立が減った」などという声も実際ありました。
「面会の調整」のためだけに機能するツールの利点とは
相談を受ける案件のなかには、「会うべきか、会わざるべきか」といったような、きわめて対立度の高いものもあります。「面会交流実施そのものの是非」そのものをめぐって争う事件については、一定の時間をかけて、家庭裁判所において調査官の調査に服し、然るべき結論をいただくほかないものもあります。
一方、「会うことはOK。問題はその頻度」といった案件では、実際のところ問題となっているのが面会交流の実施にあたっての父母間の調整方法にあった、という場合はとてもよくあります。
もともとは同居の夫婦であった父母間では、ついつい「わかってくれるはず」といった思いが勝り、ついついどちらかが言いすぎてしまうとかの問題が起こります。こういった場合、本来面会はOKだったのに「調整が負担だから、もういいや」といった方向に陥ってしまうこともままあります。
本来は父母が分かりあって面会の実現ができるのがよいのですが、なかなかそうもいかない。面会交流のアプリは、「ひと言言い過ぎ」の問題を排除して、面会の調整のためだけに機能するツールですから、その意味では、活用に一考の価値があるとは思います。