原則、年金は65歳から。多くの人が知っている事実ですが、なかには「65歳になれば自動的に年金を手にできる」と考えている人も意外と多くいます。みていきましょう。
平均月17万円だが…「年金、もらうの忘れてた!」元会社員の69歳男性、顔面蒼白で「年金事務所」に駆け込むと (※写真はイメージです/PIXTA)

意外と知らない人も多い「年金をもらうには手続きが必要」という事実

元会社員であれば、月17万円ほど。これで十分か、十分でないかは人それぞれですが、それでも毎月毎月、保険料を納めてきたからこそ手にできる年金。手にできるのは当然の権利とはいえ、楽しみにしている人も多いでしょう。しかし、なかにはこんな人も。

 

――あれ、年金っていつになったらもらえるの?

 

待てど待てど年金がもらえない、どうしたらいいのか……そんな人は意外に多いようです。年金は受け取る権利(受給権)が発生する3ヵ月前に、日本年金機構から「年金請求手続きの案内」と、「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が送られてきます。 この請求書を権利発生日以降に提出することで、年金は受給できるようになります。受給開始年齢に達したら、自動的に手にできるわけではないのです。

 

たとえば69歳の男性。「えっ、手続きが必要なの!」といまさら気づいて年金事務所に駆け込んだとしましょう。「それは手遅れですね……」。そんな悲劇が起きるかと思えば、そうではありません。知らずして「年金の繰り下げ」の恩恵を受けられることになります。

 

年金の繰り下げ受給を希望する場合は、65歳到達時に受給開始の手続きはせず、希望年齢に達した段階で年金請求の手続きをすればいいので、この場合、年金額増額という嬉しいサプライズがもたらされるということになります。このケースだと、65歳から受け取るはずだった年金額に33.6%プラスされた年金を受け取れるようになります。

 

さらに「増額のない年金をさかのぼって一括受給」という選択も。年金の時効は5年なので、65歳に達した以降に手にできるはずだった年金を、一括して受け取ることができます。ただしその場合は繰り下げの効果はなく、以降は、65歳から手にするはずだった年金額が一生続くことになります。

 

さらに2023年4月からは「繰下げ申出みなし制度」が導入され、5年前に繰り下げ受給の申請をしていたと“みなす”という仕組みになります。たとえば71歳で一括受給の手続きをしたとすると、その5年前に「繰り下げ受給の申請をしていたと“みなす”」とされ、66歳時点の増額率(0.7%×12ヵ月=8.4%)で計算された年金5年分が支給され、71歳以降も8.4%増額された年金が支給されることになります。

 

どちらがいいかは、その人の考え方によりますが、ひとまず、「年金を受け取るには手続きが必要」という当たり前のことは、きちんと把握しておきましょう。