マイホームを購入する場合、「頭金は3割」はよく言われること。それに向けて、多くの人が貯蓄を励むことになります。しかしそうこうしているうちに、「買いたい物件が買えなくなる」というジレンマも。そういう時に検討したいのが「フルローン」や「オーバーローン」。究極なことをいえば、「貯蓄ゼロ」でもマイホームが実現します。もちろんそこには、それ相応のリスクが……みていきましょう。
手取り26万円・30代会社員「貯蓄なしでマンション購入」の無謀…やっぱり住宅ローン破綻に陥る「毎月の返済額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「頭金あり」と「オーバーローン」…毎月の返済額はどれほど違うのか?

貯蓄なしでもマイホームが実現する「オーバーローン」。買い逃しがない、住宅ローン控除額を増やせる、お金を手元に残せるといったメリットもあるので、一概に「オーバーローン」は悪い、というわけではありません。

 

ただ頭金を入れないということは、月々の返済額が増え、破綻リスクが高まります。実際、どれほど月々の返済は変わるのか、前出の国土交通省の平均値で考えてみましょう。返済方式は元利均等、金利は0.5%、返済期間は30年と同じ条件とし、諸経費は50万円と仮定します。

 

頭金を入れた場合、利息分は257万2,049円となり、月々の返済は9万9,839円と、10万円を下回ります。一方、オーバーローンの場合、利息分は364万1,172円となり、月々の返済は14万1,337円と、月々4万円以上の負担増となります。

 

仮に平均的な給与水準なのであれば、前者の返済負担率は21%、後者の返済負担率は30%。返済負担率の上限は年収400万円以上であれば35%といわれていますが、余裕をもって返済できる目安は、返済負担率20〜25%とされています。そう考えると、オーバーローン利用でマイホームは実現したものの、毎月の返済で余裕はない状態だといえます。しかも「貯蓄なし」というなかでのオーバーローンの利用は、大きなリスクだと言わざるを得ません。

 

ほかにもオーバーローンのほうが金利上昇リスクが高く、借り入れをする金融機関の選択肢が狭くなるなどのデメリットも。利用を検討する場合は、それでも返済負担率が低水準に抑えられるような、強固な家計がある場合に限られると心得ておきたいもの。そうでなければ、やはりある程度の頭金を入れることは、マイホーム購入の際の必須条件と考えておいたほうがいいでしょう。

 

ただし、頭金の入れすぎも考えもの。返済負担を低くするあまり、手元資金が少なくなりすぎると、突然の給与減や会社の倒産など、不測の事態に対応できなくなり、マイホームを手放す事態に。そのような場合に備えて、生活費の1~2年分の資金を残しておくのがセオリーです。

 

月々の返済額も、手元の資金も、すべての余裕のある状態で「最適なローン」を検討していきましょう。