物価の上昇が怖い…高齢者の不安が的中も「ただ耐えるしか」
高齢者の収入は、過半数が「年金のみ」ですが、その年金を月々どれほどもらえているのでしょうか。
厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金の平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万5,665円。また65歳以下の平均年金額は、男性で16万9,006円、女性で10万9,261円。また国民年金の老齢基礎年金は、満額で約6万5,000円ほど。つまり夫婦共働きだった高齢者夫婦であれば月27万円ほど、片働きであれば23万円ほど、年金を手にしています。
こうしてみていくと、片働き世帯の場合は毎月赤字となり、足りない分は貯蓄から取り崩さないと生きていけません。共働きの場合、毎月の年金受取額が実支出を上回る計算なので、「年金だけで生きていく」が可能。かといって、余裕があるかといえば、そうとはいえない状況です。
厚生労働省は、2023年度の公的年金額を2.2%引き上げるとし、3年ぶりの増額改定となりましたが、少子化の進行に合わせて年金額を抑制する「マクロ経済スライド」を3年ぶりに適用。結局、支給額は物価上昇分を上回ることなく、実質年金は目減りすることになります。
金融広報中央委員会が毎年行っている『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』の令和4年調査結果をみていくと、「年金で老後の生活費をまかなえるか」の問いに、約4割が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答。そのうち過半数が、まかなえない理由を「物価上昇等により費用が増えていくとみているから」と考えていました。元々高齢者の2割が「物価上昇」に懸念をいだいていたといえますが、まさにいま、その不安が現実のものになっているのです。
終わりの見えない物価上昇に、目減りする年金。これから資産を増やしていくことが難しい高齢者は、この難局をただ我慢して乗り切るしかありません。