上場企業の係長を務めていたAさん。第2子が生まれたタイミングで「貯金もあるし」と“ちょっと無理して”念願の戸建てマイホームを購入。しかし、この“ちょっとした無理”がAさん夫婦の老後生活に深刻なダメージを与えることとなりました。今回、FP Office株式会社の久保雅巳氏が、Aさんの事例をもとに「35歳以降」にローンを組んで自宅を購入する際の注意点を解説します。
手取り40万円・上場企業の係長、45歳で念願のマイホーム購入…14年後に気づいた「致命的なミス」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「パートは扶養内で」にこだわらない選択も

お子様の進学をきっかけに奥様がパートを始めるというケースにおいては、「扶養の範囲内で」と考えている方が多いのではないでしょうか。しかし、その働き方が本当にベストでしょうか?

 

「130万の壁」といわれていた社会保険における被扶養者の目安は、2022年10月より「106万円の壁」へ引き下げられており、さらに2024年10月には、現行「従業員数101名以上」に適用されている社会保険の規模が「従業員数51名以上の事業所」に拡大される予定です。これには、多くのパート従業員の方が対象になるのではないでしょうか。

※ 適用条件(従業員数101人以上規模の企業に勤務、月額賃金8.8万円以上、週所定労働時間20時間以上、1年以上の雇用見込み、学生以外)

 

また、この10年間で最低時給が全国平均212円上昇しています。そのため、2012年に年収103万円で働いていたパート社員さんも、2022年に同じ時間働くと年収132万円となり扶養外になってしまうのです。

※ 2012年→22年/最低時給749円→961円

 

扶養から外れるメリット

住宅購入相談などに来られる方には、扶養を外れると、税金の増加や社会保険料徴収など大きなデメリットがあるとお思いの方が多いように感じます。しかし、扶養が外れることのメリットも少なくありません。

 

最大のメリットは、厚生年金の受給額が加算されることです。被扶養者の場合、年金保険料は発生しない代わりに、受給できるのは国民年金だけです。国民年金は、満額受給できたとしても6万5,000円程度です。

※ 2020年時点

 

ところが、厚生年金にも加入していれば保険料の上乗せができるため、加入期間によっては受け取る年金額の大幅な増加が期待できます。

 

また、扶養が外れて社会保険に加入することで、傷病手当金や出産手当金なども受給できます。

 

したがって、「働くなら扶養の範囲内」と決めつけず、子育ての状況や家計の理想収入額、無理のない働き方、扶養を外れることによって得られる将来の年金UP額などを考え、就労計画を立てるとよいでしょう。

 

出典:FP office
[図表5]社会保険に加入することによる保障の違い 出典:FP office

 

まとめ

「子供のため」「妻・夫のため」「自身のモチベーションのため」など住宅を買う目的はさまざまですが、住宅が「大きな買い物」であることには間違いありません。

 

すばらしいモデルルームを見るとそこで幸せに暮らす日々を想像し、ついつい予算も上がりがち。買いたい気持ちは高まるばかりですが、「本当に〇〇のため」になっているのでしょうか?

 

今回紹介した住宅ローン利用時における年収倍率や年収負担率はあくまで目安です。自分自身がいまの年収でいつまで働けるのか、夫婦の働き方はどのような形がベストかなど、今後の生活やお仕事、家族のことなど考え、ライフプランをしっかり立てたうえで、理想の生活を実現できるマイホームにしていきましょう。

 

 

久保 雅巳

FP Office株式会社

ファイナンシャル・プランナー