各金融機関が発表している数値をみていくと、50人に1人は住宅ローン破綻するといわれています。きちんと審査をクリアしているはずなのに、なぜ破綻という末路を辿ってしまうのでしょうか。みていきましょう。
手取り26万円・30代会社員…余裕の月返済額も住宅ローン破綻の末路「正直、何でこんなことになったのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「絶対上がらない」はない…金利上昇でどれだけ返済負担は増える?

国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』によると、分譲マンション購入者は、40歳手前で3,000万円強を30~35年返済で借入しています。

 

■新築分譲マンション

世帯主平均年齢 39.5歳

購入資金 4,674万円(うちローン3,337万円)

平均返済期間 32.0年

返済負担率:18.1%

 

出所:国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』

※返済負担率以外は一次取得者に限る

 

厚労省の調査によると、30代後半のサラリーマンの平均月収(所定内給与額)は33.4万円、手取りにすると26万円。年収は560万円ほどですから、返済負担率から逆算すると、月々9万円強のローン返済をしている……というのが平均的な姿だといえるでしょう。

 

30年という長い時間をかけて返済していくわけですから、途中、給与減や離婚危機など、不測の事態は誰もが直面するでしょう。住宅ローンを利用しているすべての人が多かれ少なかれ、破綻リスクを抱えているといえるのです。

 

そして昨今、いわれているのが金利上昇リスク。いまいわれているのは固定金利の上昇ですが、変動金利も、いつ上昇してもおかしくない状況だ、と主張する専門家も多くいます。

 

そもそも日本人、長い間、この歴史的低金利に慣れ切ってしまったため、金利上昇についてピンとこない人が多くいます。住宅金融支援機構『住宅ローン利用者調査(2022年4月調査)』によると、変動金利を選択している人のうち、「将来の金利上昇によって 返済額がどれくらい増えるか」理解していない(よく理解していない、まったく理解していないの合計)人が14.1%、「将来の金利上昇に伴う 返済額増加への対応策」を理解していない人が17.3%と、結構な数、いるのです。

 

前述の分譲マンションの平均値で考えていきましょう。返済方式は元利均等で、金利は0.5%だとすると月々の返済額は9万4,056円。0.1%上昇すると、月返済額9万5,531円となり、年間1万7,700円の負担増となります。

 

では金利が0.5%アップするとどうでしょう。月返済額は10万1,581円となり、年間9万0,300円の負担増。

 

金利が1%アップすると、月返済額は10万9,472円となり、年間18万4,992円の負担増。そして金利が2%アップすると、月返済額は12万6,333円となり、年間38万7,324円の負担増となります。月返済3万円以上、年間40万円近い負担増ともなれば、あっという間にローン破綻、というのも現実的な話です。

 

大手銀行の変動金利の推移をみていくと、この20年、2.3~2.4%と、変動金利ではなく、ほぼ固定金利、という状況でした。そう考えると、確かに金利が大きく上昇する可能性は低いように思われます。しかしこれ以上の金利低下も考えにくい現状。さらに、本来住宅ローンは、景気や物価、為替などの影響を受けます。「国内景気が好況」「国内物価が上昇」「為替が円安」「海外金利が上昇」「株価が上昇」という局面で住宅ローン金利は上昇するといわれていますが、現状、いくつか当てはまる項目も。この先「絶対金利は上がらない」とはいえない状況なのです。

 

返済が長期となる住宅ローン。不測の事態に「正直、何でこんなことになったのか……」と後悔しないよう、万が一のときにどう対応するか、きちんとシミュレーションし、実行できるよう整えておくことが重要です。