2022年4月から「在職定時改定」の制度が導入され、「年金をもらいながら働く」メリットが拡大。ますます働く高齢者は増えると考えられます。しかし年金を手にしながら、働く理由となんなのでしょうか。みていきましょう。
年金月14万円だが…70代の高齢者「時給1,120円のファストフード店員」年金をもらいながら続けるワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

そもそも、なぜ年金をもらえるのに働くのか?

年齢別にみていくと、65~69歳では時給1,371円。1日5.0時間、1ヵ月16.7日働き、手当含めて月15万1,000円。70歳以上では時給は1,351円、1日4.8時間、1ヵ月16.2日労働で、月12万9,000円というのが平均値です。

 

パート・アルバイトで働き続ける70代の高齢者は、月13万円、手取りにすると10万円ほどの給与を手にしています。ファストフードで見かける高齢者の従業員も、この程度の給与を手にしていると考えられます。それにしても、どうして70歳を超えてまで働き続けるのか……疑問に思っている人もいるでしょう。

 

話を聞けば、働き続ける理由は大きく2つ。「健康のため」「生きがいのため」という、「別に働かなくても大丈夫」な人たちと、「生活のため」と「働かないと大丈夫ではない」人たちです。

 

「生活できる/できない」の境界線として、生活保護費支給の目安となる最低生活費をみていきましょう。東京都23区に住む70代前半の場合、生活保護費は概算で12万7,920円(生活扶助基準額:7万4,220円、住宅扶助基準額5万3,700円)。この1ヵ月の収入がこの金額を下回ると、東京23区では「生活が難しい」ということになります。

 

地方の例として、青森県青森市の場合もみていきましょう。生活保護費は概算で10万0,530円(生活扶助額:6万9,530円、住宅扶助基準額:3万1,000円)。地方のほうが生活費は安いですが、それでも1ヵ月の収入が10万円ないと、生活が難しくなります。

 

厚労省の調査によると、厚生年金保険(第1号)の平均年金受給額は老齢年金で月額14万6,145円。手取りは月12万円ほどになります。東京23区で年金だけで暮らしていくのは、ギリギリのライン。足りない分は貯蓄を取り崩すことになりますが、十分な蓄えがなければ、働かないと生きていけません。

 

また年金受取額の分布をみていくと、厚生年金受給者で月10万円に満たないのは23.3%。元会社員・公務員の4分の1の人は年金10万円以下。十分な蓄えがなければ、東京はもちろん、地方でも生きていくのが難しく、生活のために働かざるを得ない人たちなのです。

 

誰もが悠々自適な老後を思い描くもの。しかしそんなバラ色の老後を実現できている人は少数派なのかもしれません。