「遺族年金」とは「家族を養っていた人が亡くなった際、残された家族に対して年金が支給される」という制度です。この制度を聞いたことがある人は多いでしょうが、いざ自分がもらう立場になったとき、実際にいくらもらえるかわからないという人は少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、54歳の夫を亡くしたAさんの事例をもとに、遺族年金と「万が一の事態」への備えについて解説します
手取り45万円・54歳会社員の夫急逝…〈遺族年金支給額〉をみた妻「死ぬまで働くしか」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

万が一の備えの基本は「生命保険」

生命保険は、まさに家族の突然の不幸に備えておく仕組みです。この生命保険で「死亡保険金」の準備を考えてみると、仮に30歳の時点で「30年満期の貯蓄型生命保険500万円~2,000万円」を準備した場合、毎月の保険料は約1万5,000円~6万円ほどになります。

 

掛け捨ての保険ではなく貯蓄型にしておけば、万が一のときにも、あるいは生存して満期を迎えたときでも保険金を受け取ることができます。

 

ただし、貯蓄型を選んで万が一がなかった場合、子供が大学進学するなどした際解約して学費に充てるわけにはいかないため、学費は別に準備しておいたほうがいいでしょう。

 

その場合は学資保険を活用してはいかがでしょうか。子供が産まれてから高校卒業までの約18年間加入した場合、毎月の保険料1万3,000円ほどで300万円用意できます。この間に生計者の死亡など万が一のことがあれば保険料の払い込みは必要なくなり満額が受け取れますし、子どもの人数が増えても対応できます。

 

このように、貯蓄型生命保険と学資保険両方に加入すれば十分な保障金額を準備できますが、毎月の保険料で生活を圧迫してしまうのが悩ましいところです。反対に、保証金額を抑えると万が一のときに足りなくなってしまいます。どちらを重視すればよいのでしょうか。

 

筆者が、Aさんのように夫や妻が亡くなり生活に困ってしまった方とお話ししてきた印象では、やはり十分な保障金額を準備しておけばよかったと話す方が多いです。

 

家族が健在のときに支払う保険料の負担よりも、家族を失ったあとの資金面の負担のほうが長くて辛いと感じるようです。

不動産投資を利用して負担のない準備をするのも手

そこで、毎月の保険料負担を軽くするために活用したいのが「不動産投資」です。一見、保険とどんな関係があるのかと感じますが、実は不動産投資には生命保険の効果があるのです。

 

不動産投資を行う際は銀行融資を活用しますが、このとき「団体信用生命保険」に加入します。万が一のときに不動産ローンが完済されれば、それ以降は遺族年金のように家賃が受けとれるようになるのです。

 

不動産投資を活用した場合のシミュレーション

仮に、下記のような中古ワンルームマンションを頭金10万円、残りは銀行融資で購入した場合を考えてみましょう。選ぶ物件は価格を少し抑える方向で、都心より少し離れたエリアがおすすめです。築15年前後の物件で考えれば、ほとんど現金を使うことなく生命保険と同様効果を得ることができます※。

※物件や銀行融資条件等は、専門業者やFPにご確認ください。

 

・中古ワンルームマンション:価格1,600万円、賃料69,000円
・利回り:5.17%
・立地:練馬区/地下鉄赤塚駅徒歩5分
・築15年、23㎡
・購入プラン頭金10万円、銀行融資1,590万円 金利1.6%、期間35年 
・月収支プラス1,500円=(賃料69,000円-ローン返済額50,000円-管理費修繕積立等17,500円)

 

今後、空室や家賃下落の可能性はありますが、同等保障額を生命保険で現金で準備するより負担が少ないため、現実的にどちらの負担が少ないかを自身の状況に置き換えて考えることが必要です。

 

もし同じような物件を、もう1軒購入できるようなら増やしておくと保険効果をさらに上げることもできます。

 

もちろん不動産投資にリスクはありますが、現金で全部準備するリスクもあります。表面的な情報や意見に惑わされないようにするためにも、不動産投資の知識や経験があるFPに相談することも重要ですね。

 

 

伊豫田 誠

FP事務所ストラット

代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー